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脱兎の如くという言葉がまさに当てはまるように、先輩はその場を離れた。いや逃げ帰ったという表現の方が適切かもしれない。
流れる沈黙をどうしたらいいかわからなくて、国見の方を見ると目が合った。なんとなく逸らすことも出来ず無言のまま見つめ合う形になって。
「……ありがと」
「……おう。でも少し過剰防衛になった」
「……」
ポツリポツリと交わし始めた言葉。過剰防衛に関しては少し否定しきれないのが我ながら情けない。
というか今更だけど、今2人きりだ。
こか数日(微妙ではあるが)多少の接点はあった。でもだいたいは間に誰かを挟んでいたわけだ。何度も言うが朝の中庭に来る人などいない。今は本当に私と国見しかいないのだ。
「……否定なしかよ」
「いや、その……国見の新たな一面見たなあっていうか何というか……」
「……怖がらせて悪かったよ」
「え、怖がってたというか違くて……いや確かに怖いって思わなくもなかったけど。でも助けてくれたのは本当だから。嬉しかった」
「……正直か。お前って変わんないな」
「そっかな?……というか私も成り行きとはいえ盗み聞きしちゃってごめん」
私って単純だ。あんなに話すのを怖がってたはずなのに、国見が助けてくれたって事実だけでそんなのどうでもよくなっちゃって。
昔程じゃないけど、落ち着けば話せている気がする。だからこの流れで誤ってしまおうと思ったのだ。今回の事と、中学の事。
「なんでお前が謝んの」
「……迷惑かけたし」
「今回の件も俺が巻き込んだんだぞ」
「助けてくれたじゃん」
「……っ、お前は本当に変わってない」
「何それ」
「お人好し」
「違うし」
「どーせ水瀬にも似たような事言われたんだろ」
「……言われてないし」
「図星かよ」
短い言葉でやり取りして。
ちょうどよくチャイムが鳴った。先輩に呼ばれたのが朝のホームルーム開始約30分前、おそらく今のは開始5分前。そんなに時間経ったのかって思って、教室に戻ろうとした。
話すために窓枠に近付いていたので、流石にこの距離で何も言わずに1人で戻るのは忍びない。国見にも一応声をかけようと思って。
「国見、そろそろ戻
「なあ」
窓から伸びてきた腕が私の腕を掴む。グッと力の入ったそれは、勿論国見のもので。
リーチの長い国見の腕は私のを掴み、そのまま窓枠側に引き寄せた。
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花見っ子(プロフ) - アップルキャンディさん» 最初から!?すごい嬉しいです!なら余計に更新ものすごく間が空いてしまってすいませんでした……このシリーズだけは絶対完結させます。お付き合い頂けたら幸いです。 (2020年11月30日 21時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
アップルキャンディ(プロフ) - 初めまして!シリーズ最初から読んでます!久しぶりに占ツク開いたら更新通知が来てて、コメントしたくなるぐらい幸せでした…。色々と拗らせてる国見ちゃん、読んでて苦しくなるほど好きです。無理のない範囲で更新頑張って下さい。 (2020年11月29日 18時) (レス) id: addc80a2b2 (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - ゆったーさん» そう言ってもらえるてとても嬉しいです!安心して書ける……更新頑張ります、コメント感謝です。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 端広コウさん» 急な逃走及び告知のない復帰にも関わらず、このようなコメントを頂けてとても嬉しいです。正直ちょっと泣きそう……更新頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
ゆったー - 綺麗で読みやすい文章!内容がしっかりしてて違和感がなかったです!ちょっとだけ見るつもりだったけど、凄いドンピシャで全部読んじゃいました(笑)キャラの性格と口調も掴んでて変に思わなかったです!更新楽しみに待ってます!長文失礼致しました (2020年11月29日 0時) (レス) id: d351a6af56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年8月11日 20時