これが恋ではないのなら、【国見英】

《２５》 ページ32

決心して、とりあえずAと話そうとおもった。とはいえ今さっきの惨状の後で普通に話しかけられるだろうか、いや無理だ。再度惨状になる未来しか見えない。



「……月島」

「何？」

「ちょっと頼まれ事して」



は？とでも言いたげな月島の目の前で、俺は鞄からノートを取り出してビリッと破いた。さらば今日の俺の数学のノート。明日誰かに見せてもらおう。

その破った端に、明日の朝中庭に来て欲しいとの旨を書き記す。勿論宛先はAである。



「これ、あいつに渡しといて」

「……君って意外と大胆だね。ノート破る必要あった？」

「付箋なんか持ってないし」

「でももう少し他にやり様あったんじゃ」

「この際なりふり構ってられるか。とりあえず伝わればいいんだから」

「……これはまた、本気出してきたね」

「どーも」



それをポケットに入れる月島は意地悪く「僕が渡さないって可能性は考えないの？」と聞いてきた。でも平然と「そんな事しないだろ」って言ったら「まあね」と鼻で笑われた。

月島は、いい奴なのかそうでないのか。

とりあえず、現時点では信頼しているが。



「じゃあ僕はこの頼まれ事を以て、完全に傍観者にならせてもらうよ。あとは頑張ってね」



そう言って月島は、A達が向かった方向に歩いて行った。あたりは暗かったので月島の姿はすぐに闇に消えて見えなくなった。

そして俺は、明日のことを思う。

何から言えばいいんだろうか。今までの事に対する謝罪か、好意のことか。第一あいつは来てくれるだろうか。

なんでもいい、とにかく目標は



「現状打破、かな」

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