《20》 ページ27
走っていったAと、それを追いかけていった山口という奴。
俺にはそれを追う資格なんてない。
そしてそんな俺の横には何故か、月島が残った。さっき初めて話したわけで尚且つさっきの惨状の後である、勿論会話など弾むはずもない。
なのに、だ。
「少し、お話しようか」
月島はそう言った。
Aと仲が良さそうに見えたこいつが、わざわざ俺にいうことなんて限られているというか目に見えている。
さあ、月島。お前は俺をなんて罵る?なんて文句をつける?なんだって受けてやろう。だって俺はそれだけの事をしてきたんだ。
そんな気持ちで月島が口を開くのを待った。
「……あ、別に警戒しないでいいよ」
「……は?」
「だって僕、君を罵倒するつもりは毛頭ない」
なのにそんな事を言われる。あまりにも拍子抜けした。じゃあ何のために俺を呼び止めた?お前だってAを追いかけていけばいいのに。
それで俺を、悪者にすればいいのに。
「……なんで」
「何?逆に罵って欲しいわけ?ドM?」
「違う。でも他に何の用があるんだよ」
「強いて言えば、天邪鬼な君にアドバイス?」
「……は??」
余計に意味がわからなくなった。
なんだこいつ、全く意図がわからない。アドバイス?俺に?なんの?
疑問符を並べるしかない俺に月島は呆れたような視線を送りつつ、話し始める。
「大体はAさんに聞いたよ。君って見かけによらず、とんだ天邪鬼じゃないか。もっと素直になりなよ」
「素直になる?なんだそれ」
「君が何をどう思ってるかなんて知らないけど、好きな子にあの態度はないよね」
「……なんで、それ」
「逆に気付かないと思った?本人は全然っぽいけど常人ならわかると思うけどな。好きの裏返しも大概にして欲しいところだよ」
あれ?なんでこいつには、こうも簡単にバレたんだろう。否定のしようもない。
好きの裏返し、天邪鬼、素直になれ
月島の言葉が次々に胸に刺さる。
うるせえ、わかってるよ。そんなの俺が一番わかってる。その上で何一つうまくいってないんだ。とんだお笑い種だ。
「自分じゃない奴に、好きな人が頼ったのが悔しかった?それとも彼女が僕の裾を引っ張ったから?」
「……」
「……羨ましかった?」
なんだ、バレバレじゃないか。
俺は何も言わずに月島の顔を見る。
でも月島は
「……僕なんか、こんなになってまで好かれている君の方が、よっぽど羨ましいよ」
ポツリと、そう呟いた。
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花見っ子(プロフ) - アップルキャンディさん» 最初から!?すごい嬉しいです!なら余計に更新ものすごく間が空いてしまってすいませんでした……このシリーズだけは絶対完結させます。お付き合い頂けたら幸いです。 (2020年11月30日 21時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
アップルキャンディ(プロフ) - 初めまして!シリーズ最初から読んでます!久しぶりに占ツク開いたら更新通知が来てて、コメントしたくなるぐらい幸せでした…。色々と拗らせてる国見ちゃん、読んでて苦しくなるほど好きです。無理のない範囲で更新頑張って下さい。 (2020年11月29日 18時) (レス) id: addc80a2b2 (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - ゆったーさん» そう言ってもらえるてとても嬉しいです!安心して書ける……更新頑張ります、コメント感謝です。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
花見っ子(プロフ) - 端広コウさん» 急な逃走及び告知のない復帰にも関わらず、このようなコメントを頂けてとても嬉しいです。正直ちょっと泣きそう……更新頑張りますので、お付き合い頂ければ幸いです。 (2020年11月29日 14時) (レス) id: f68b48dadb (このIDを非表示/違反報告)
ゆったー - 綺麗で読みやすい文章!内容がしっかりしてて違和感がなかったです!ちょっとだけ見るつもりだったけど、凄いドンピシャで全部読んじゃいました(笑)キャラの性格と口調も掴んでて変に思わなかったです!更新楽しみに待ってます!長文失礼致しました (2020年11月29日 0時) (レス) id: d351a6af56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花見っ子 | 作成日時:2019年8月11日 20時