抱きしめてあげる

5.nakamura（生きてさえいればさ） ページ7

自分が、死ぬ夢を見た。
ヤスが泣いていて、かつやまとなかるてぃんがそれを支えていた。京極はずっと下唇を噛んで俯いていた。出不精なはずの南が、バイダンとたかさきに挟まれて呆然と立っていて、田辺さんの顔はメイクの甲斐がないほど崩れていた。
きちんと生きていられた自信はとうとうなかったけども、これだけの人が泣いてくれることに、どこかで安心も覚えた。
でも。そこにAの姿だけがなかった。京極と会わせたこともあるし扉絵を京極が書いたこともあるのに、京極は声をかけてくれなかったのだろうか。最後に逢いたかったなぁ、なんて。

＊

「かっ、かつやま！！！」
「うわぁなに？！遅刻したの？しゅんちゃん」
「ちがう！！足！おれ、足ある？？！」
「...？？あるじゃん、ちゃんと。どうしたの？」
自分が死ぬ夢見たねん、とは些か言えなかったがそのまま玄関に走る。
「え、どこいくのさ？」
「Aんとこ！」
「？？？うん？いってらっしゃい？？」

＊

走った、それはもうとにかく。最寄りからAの最寄りまでふたえきしか離れていないのに、何故かとても遠く感じる。もしもいなかったらどうしようか、なんてそんなことを考えては頭が爆発しそうになる、永遠みたいなふたえきだった。
部屋番号を押してしばらく、はーい？と呑気な声が聞こえた。
「A？Aやんな？？」
「そうですよ？今開けますね」

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