◇軍人らしい？らしくない？ ページ9
『玄関をあけられて、私を見るなり飛び出していきました…たしか、森の、あの向こうの方へと走っていってしまったので…』
「なんと、情報提供感謝します。お怪我はされてないですか。」
『ええ、大丈夫です。このくらいしか分からず、すみません』
「いえ、ありがとうございます。では。」
向こうだ、探せ。
そう言いながら去っていった大勢の兵士の背中を見送るとゆっくりと玄関の鍵を閉めた。
振り返るとサヨさんが客間の扉から覗いていた。
それもそうだろう、もしかしたら自分が敵国に売られるかもしれないんだから。
『これで、良かったですかね…』
そう声をかけると、ゆっくりと客間の扉が開いた。
「……Aさん、演技派やねんな」
『そんな事ないですよ、半分は本当のことですし』
「嘘つけ、８割が嘘やったやん」
そう言うと、サヨさんは笑いながら構えていたナイフをおろした。そりゃ警戒するよね、と冷静に考える頭はあるのに、もしかしたら刺されていたかもしれないという恐怖で手が震える。
「っあ、ごめん。怖がらせたよな」
震える手がバレたのだろう、彼はナイフをホルダーにしまって客間にポイって投げた。カシャンと落ちる音がする。
ほらもう手元にないで〜、と手をフリフリして安心させようとする彼の姿は軍人だと言うのにどこかお茶目だった。
『お洋服、大丈夫ですか？』
「おん、ピッタリやわ。ありがとうな」
『よかったです。着てらした服洗濯しても？』
「いや、ええよ。泥だらけやし、汚いから」
『だから洗うんですよ』
「いやまあせやけど」
ダメではないらしいので強制的に洗濯だ。洗濯機に入れる前に軽く手洗いする必要もあるだろう。
『ポケットとか、もう何も入ってないですか？』
「あー、あるわごめん」
そう言ってポケットから出したのはピルケースらしき何か。ドックタグと言われるアレもあった。そして
『なんですか、これ』
「あー、、、、まあええか、これ通信機」
『にしては部品にしか見えませんけど』
「まあ、残骸やからな」
見るも無惨なガラクタにしか見えない部品たち。サヨさんはアイツに怒られるわー、なんて言っている。にしても少ない。片方の手のひらに収まるくらいしか部品がないなんてどんな小ささなんだか。
もうないで！と言われてオーバーオールを受け取る。
『お洗濯してきますね』
「すまんな、ありがとう」
『あ、えーと廊下の突き当たりの扉がお手洗いです。』
「おんわかった」
『怪我の事もあるのであんまり動いたらだめですよ？』
「大丈夫やて、平気平気」
そう言って笑う彼。
いや、そういう意味じゃないんだけどな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1814人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ーーー - 好きです (3月13日 4時) (
レス) @page35 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - 楽しい作品ありがとうございます！続きも楽しみにしてます。 (2023年3月27日 10時) (レス) id: 26248b9bea (このIDを非表示/違反報告)
なな - お米様抱っこ好きですw (2022年10月15日 21時) (レス) @page28 id: 7cadbb1f0e (このIDを非表示/違反報告)
スンドゥブ左衛門(プロフ) - 無名さんさん» お返事遅くなりました。どちらに掲載したのか等をお教えいただけるのでしたら、是非お願い致します。ﾂｲｯﾀとかでご連絡頂けると助かります。 (2022年8月7日 8時) (レス) id: 2b12ea7bfc (このIDを非表示/違反報告)
無名さん - 失礼します！僕今、おすすめの作品を紹介していて、作者様のお名前と作品を出してもよろしいですか！？こちらの作品僕大好きでして…ぜひ紹介したいんです！ (2022年8月6日 11時) (レス) @page35 id: ea8e66f22c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：スンドゥブ左衛門 | 作成日時：2022年6月14日 15時
