◆異国の女 ページ8
sha side
しまった。失敗した。
空き家だと思って逃げ込んだ家に住人がおったなんて。
人の気配がないからと思ったんに。
出てきた女はここら辺ではあんまり見いひん黒目に黒髪。ひとらんとかと同じ極東出身か?
敵か味方かも分からん女に名前を聞かれ、咄嗟にサヨと名乗った。シャオっぽいやろ、何となく。
遠方から引っ越してきたと言う彼女は俺たちω国のことは知っているらしかったが相手のβ国は名前すら知らん様子やった。
でもまあ、消毒やら手当やらしてもらったことには感謝してるが信用はできん。
どうするかと悩んでいると玄関先から人の声。
人数的にも方言的にもβ国のやつや、ここにおるんがバレたらまずい。立ち上がろうとした彼女の腕を掴んでとめた。
『ん?』
「行ったらあかん」
『え』
「βのやつや、あかん」
キッ、と睨んでしまった自覚はある。
だが彼女は俺の手をゆっくり解いた。
『出ないと逆に怪しまれますよ、行ってきます』
「あかん」
『きっと大丈夫です』
そう言って玄関先に向かった彼女。流石にこれでβ国の回しもんやったら笑えへん。
さっき脱ぎ捨てたオーバーオールのポケットからナイフを回収して借りたスウェットを履く。ゆっくり立ち上がろうとすると、ザリザリと音がした。
『…これ、重いですね』
そういって彼女が持ってきたのは俺の武器であるシャベルと泥だらけの靴。
「え」
『玄関先にこれあるの、おかしいですから』
そう言って、今度こそ出てきますと扉を閉めた。
確かに、奴らは俺がそのシャベルを振り回して戦っていたことを知っている。でもその事実は彼女は知らんはずやのに。
そっと立ち上がって扉を少し開けると、廊下の奥にはダンボールが積まれていた。ω国の支援物資だとわかる刻印がある。
さっきの話は、一応ホントやっちゅーことやな。
ガチャリと玄関の扉を開ける音が聞こえ息を潜める。
『どうしましたか』
「この辺りを見回りしている軍のものです。怪しい男を見ませんでしたか。」
『怪しい?申し訳ありません、ここ数日家から出ていないんです』
「そうでしたか。赤い帽子を被った男が来たりしませんでしたかな。」
『赤い…?ああ、それなら、』
"先程いらっしゃいましたよ"
血が吹きでそうなほど沸騰した。このアマ、やはり敵か。
そう思ったのもつかの間、彼女の言葉が続いた。
『玄関をあけられて、私を見るなり飛び出していきました…たしか、森の、あの向こうの方へと走っていってしまったので…』
向こう、と指さした彼女の横顔はとても綺麗だった。
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ーーー - 好きです (3月13日 4時) (レス) @page35 id: fc78fe5922 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - 楽しい作品ありがとうございます!続きも楽しみにしてます。 (2023年3月27日 10時) (レス) id: 26248b9bea (このIDを非表示/違反報告)
なな - お米様抱っこ好きですw (2022年10月15日 21時) (レス) @page28 id: 7cadbb1f0e (このIDを非表示/違反報告)
スンドゥブ左衛門(プロフ) - 無名さんさん» お返事遅くなりました。どちらに掲載したのか等をお教えいただけるのでしたら、是非お願い致します。ツイッタとかでご連絡頂けると助かります。 (2022年8月7日 8時) (レス) id: 2b12ea7bfc (このIDを非表示/違反報告)
無名さん - 失礼します!僕今、おすすめの作品を紹介していて、作者様のお名前と作品を出してもよろしいですか!?こちらの作品僕大好きでして…ぜひ紹介したいんです! (2022年8月6日 11時) (レス) @page35 id: ea8e66f22c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スンドゥブ左衛門 | 作成日時:2022年6月14日 15時