【d!】人気作家の異世界生活【軍パロ】

◇カラフルな人 ページ7

赤っぽいニット帽を外した彼は、サヨと名乗った。
女性のような名前だと感じたのは日本人だからだろうか。

『サヨさん、ですね』
「……おん。君は」
『Aって言います』
「Aさんは、さ、あの、どっち側なん」
『…どっちとは』
「国。ωなんかβなんか」
『…たぶんω国ですね』
「多分ってなんやねん」
『つい１ヶ月前くらいに遠方から引っ越してきたので、、一応良くしていただいてる町はω国なので』
「ん、そか。よかったわ。」

話を聞けば、サヨさんはω国の軍人さんらしい。
今戦っている隣国はβ国というところらしく、その兵士に追われていた所にポツンと一軒家だったらしい。
町まで出るのに確かに時間はかかるがそんなに森の中だとは思っていなかったためビックリだ。

「よくこんな所に住んでたな」
『逆に、この森そんなに深いの知らなかったです』
「通称、闇底の森って言われとる。現地の人間ぐらいしか正確な抜け道が分からへんって話や。」
『そうだったんですね…』
「町までの出方はわかるん？」
『はい、それはわかります』
「よかった、案内してくれへん？」

町まで出れば本部まで帰れる、そう言っていたが

『…歩けます？』
「………無理やな」

全身傷だらけな上に酷く腫れた足首。
とてもじゃないけど歩けそうもない。

『とりあえず、着替えと消毒ですかね。父ので良ければ服は貸せますので』
「…ありがとうな色々と」
『いえ』

とりあえず、お風呂には入れなさそうなので濡らしたタオルで身体を拭いてもらうことにして、氷嚢と救急箱の準備だ。

キッチンやらリビングやらを行き来して客間に戻ってきたらパンイチで身体を拭くサヨさんがいた。

「おわ、すまん」
『あ、いえすみません。』
「傷だらけで汚いやろ、ごめんな」
『汚くないですよ、勲章でしょう？』

染みますよー、と勝手に消毒していく。
いででで、と声を荒らげているが気にしない。着替えた後にまた捲って貰ったりする方が手間がかかるから。

傷は至る所にある。切り傷、擦り傷、打撲に捻挫。
ほぼ全身というレベルの消毒をしてから氷嚢を足首に当てる。

「つめた」
『冷やしといた方がいいですよね多分』
「わからん、多分」
『私も分からないんであれですけど』

そんなこんなをしていると玄関の扉をドンドンと叩く音がした。

「すみませーん。誰かいますかー」

『ん？』
「行ったらあかん」
『え』
「βのやつや、あかん」

サヨさんの目は真剣だった。
そりゃあそうだろう。今ここで鉢合わせたら確実に不利だ。
でも。

『出ないと逆に怪しまれますよ、行ってきます』

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