【d!】人気作家の異世界生活【軍パロ】

◇他愛もない話 ページ26

「ちゃんと食べなアカンで」
そう言って鬱様とマンちゃんと呼ばれた彼は出ていった。
とはいえ、手が後ろで縛られているのだから食べるものも食べられないのだが。

殴られた頬が痛い。引っ張られた髪が痛い。
はぁ、とため息をついて横になる。
サヨさんが無事だと分かったのは大きいけれど。

することも無いのでウトウトしていると、重い扉が開く音がした。
入ってきたのは、金髪でサッカー選手みたいな格好、町で見た彼、コネシマ様だ。後ろには、白い軍服の彼もいた。

『…コネシマ様』
「お前、俺の事分かるんけ」
『…町でお見かけしまして』
「おう、そうかそうか」

鉄格子の前にどかっと座った彼は、近く来いや、と手招きをした。ゆっくりずりずりと動きながら、鉄格子の前に移動する。冷たい鉄格子越しに対面だ。コネシマ様はとても綺麗な顔をしていた。

『どうなさったんでしょうか』
「いやあ、お前の話を聞いてな、話してみたくなってん」
『そうだったんですね』
「せやねん、" だから話し相手になってや "」
『" はい、私でよければ "』
「" じゃあそやな、お前ん家調べさせてもろたんやんか "」
『" そうだったんですね "』
「" おう、すまんな。んでな、お前ん家本いっぱいあるやろ "」
『" あ、そうですね、はい "』
「" 読書好きなんか？ "」
『" はい、好きですよ "』
「" おう、そうか、ええやんけ "」

そんな他愛もない話をした。
コネシマ様も読書がお好きらしい。

するとコネシマ様の後ろから声がした。

「"" あのさ ""」
『"" あ、えっと、 ""』
「"" ごめんねAさん、俺ひとらんらんって言うんだけど ""」
『"" ひとらんらん様 ""』
「"" うん。それでね、その座り方なんだけど ""」
『"" これですか？ ""』

どうやら正座のことを言っているらしい。

「"" それは、昔からの癖？ ""」
『"" えっと、まあ、はい ""』
「"" 足、痺れないの？ ""」
『"" 時々、でももう慣れました ""』
「"" そっか。でもこの国ではあんまりする人いないし、足崩しても別に何も言われないから気にせず楽にしてね ""」
『"" あ、、ありがとうございます ""』

正座、そうか、海外では馴染みないもんな。ここでもあまり馴染みが無いものなのかもしれない。

ゆっくり足を崩すと、ひとらんらん様はふっと笑った。

「" お前、Aっていうんか "」
『" はい、名乗らずすみませんでした "』
「" ええってええって、話相手してくれてありがとーな "」

よっこらしょ、と立ち上がったコネシマ様はまた暇な時来るわ。と言って重い扉を開けて出ていった。

幹部様が暇だからなんて来るものなのだろうか、なんて思いながら壁際へと移動した。

◆予想通り→←◆彼女の処遇

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す