おいでエリンギ

38、メン ページ38

目的のお店は、駅から数分のところにあった。本当に学校のほど近く。もっちり太麺がウリの醤油ラーメンのお店らしい。かなりの老舗のようで、古びた店構えだった。

Aが重そうな扉をギシギシと言わせながら開き、俺はその後に続く。モワッと、スープの匂いが漂ってきた。はじめてのお店は、すこし緊張する。

Aちゃん久しぶり！と、Aは店のおじさんに声をかけられる。どうやらお得意さんのようだ。おじさんはAから視線をスライドさせてきて、俺と目があった。軽く会釈する。

「その子は、Aちゃんの友達？」
「ああ、いや……。」

友達とまでは、いかない気がする。俺が答えあぐねていると、

「おじさん知らないんですか？いみじ！王帝月ノ宮の西蔭さんですよ！有名人ですよ！」

いみじ、に首をかしげる。ボーノだとか、いみじだとか、纏向中の生徒は変な言葉遣いをするものなのか？

「あ、ああ〜どこかで見たことがあると思ったら。実物は何倍も男前だね。近隣に君たちみたいな強いチームがあって嬉しく思っているよ。」
「いえ、ありがとうございます。」

カウンターに座ると、Aがピッチャーから水を注いでくれた。
お礼を言うと、Aは、いえいえ、と笑顔で言った。今更ながら、よく笑うやつだと思った。俺の周りにはいないタイプだと。
コップをぐい、と煽る。冷たい水が喉に染み渡り心地よい。

「西蔭さん何頼みますか？」
「じゃあこの、チャーシュー麺で。」
「はは、ガッツリ行くなあ。私もそれにします。あと、野菜炒めと、餃子。」
お前の方がガッツリ食うじゃないか。

すいません、とAがおじさんを呼び、注文する。
注文して出てきたラーメンには、煮卵がトッピングでついていた。頼んでいなかったので、間違っていますよと声をかけようとしたらAに止められた。
多分サービスです、とAが俺に囁き、おじさんを見るとウインクされた。キザな。

いただきます、と二人で並んで手を合わせる。
一口ラーメンをすすると、あっさりとした美味しさで、醤油ならではの香ばしい香りがする。麺も看板どおりのもちもちとした噛みごたえで、やはり太麺も美味しい。チャーシューは量が多い上分厚く、しっかりとした肉の味が口いっぱいに広がる。食べ応え抜群だ。味の染みた玉子は、黄身がとろりとしていて優しい味わい。

うまい。思わずそう呟くと、ですよね！とAが嬉しそうに目を細めた。

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