おいでエリンギ

15、赤ちゃん！ ページ15

フットボールフロンティア本戦会場は駅チカで、こんな都会のど真ん中で良い立地のところに何百平方のスタジアムをたてられるなんて、やはりサッカー業界はお金を持っているな、感嘆。

でっけえなあと、隣でエスカバ先輩もしみじみしていた。

「Aは昨日来たんだよな？」

「はい。一昨日も。エスカバ先輩はもう何度も見てますよね。そんなに地方出身者のような挙動をしなくても。いえ、地方の方を馬鹿にしているわけではなく。」

「いや、そんなには来てねえよ。ここができたの割と最近だからな。そんなに頭が働かねえか、赤ちゃん。」
「そんなにガキじゃないですけど！」
「怒るな怒るな。」

どうどう、エスカバ先輩に宥められる。

まあ無駄話もここら辺にして、ライセンスカードを受け付けに見せて会場内に入った。

試合の最中とはまるで違い、会場にはまだ半分も人が入っていない。よくよく考えると、プロの試合でもない中学の全国大会にこんなにたくさんの一般客がいることが不思議なのだけれど。

すでに来ている人も、場所取りをしようと思ってた纏向中のベンチの真上あたりは、自校のサポーターが多くて、ブルーシートを敷こうとしたら、どうぞどうぞと喜んで場所を譲ってくれた。私が早起きした意味ってなんなんだろう。でもありがとう。

エスカバ先輩と2人で荷物を乗せるためのブルーシートを敷く。2人だと結構、骨の折れる作業だ。サポーターの方々が手伝いを申し出てくれたが、そちらは丁重にお断りする。ブルーシートを敷き終わったら、スズランテープで場所の権利を主張。

それも終わり、荷物を降ろしてベンチに腰かけた。

「試合始まるのって10時ですよね？」
「そうだな、今は7時だ。長いな。」
「だから言ったのに。」
「なあ、交代で荷物番しないか？」

エスカバ先輩が既に腰をあげかけて言う。ここで了承したら、戻ってくるかどうか怪しい。

「一人でここいるのやですよ。トイレ行きたくなった時に困るし。」
「ワガママなガキだ。」

エスカバ先輩は呆れたように鼻を鳴らしつつも腰を落ち着け、スマホゲームをやりだす。

「三年生に見つかったら、どやされますよ。」

その前にスマートフォンの充電がなくなりそうだ。
「良いんだよ。」エスカバ先輩は適当に言う。

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