遠距離系×交換日記。。【名前変換オリジナル】

９ (4月29日) ページ9

沢山の車のエンジン音が、青く澄んだ空に排気ガスを吐きながら頭の上を通過する。
私達の待ち合わせの場所は高速道路の下の河川敷だった。

幸いな事に住んでいる場所も近くて気軽に会える範囲だった。

『聖夜君ってどんな人なんだろう』

交換日記の時と同じで、優しいのかな？

聖夜君について考え始めた、その時だった。



向こうから手を振りながらこっちに駆けてくる人のシルエットが１つ。
それが段々と大きくなって形を定めていって。
そして彼に見いっている私の前で彼は止まるとこう言った。


「待った？」


いきなりの問いかけに私は顔をぶるんぶるんと振る。


「良かった〜、ちょっと寝坊しちゃって。猛ダッシュで来たんだ」

額に汗をかきながら聖夜君が言う。

『なんだかとっても楽天的な人』

普通に顔見知りの友達と話している様な感覚に陥る。

『私だって昔はこうして友達と戯れてたっけ』



「……………Aさん？………Aさん！？」
「へっ？あっ、ごめんなさい」

なんだかぼ〜っとしちゃって、呼ばれている事に全然気が付かなかったらしい。


「ふふっ………はははっ！」


急に聖夜君が笑い出した。


「どうしたの？聖夜君？」


その時だった。
私の中にはまた裏切られるんじゃないかって考えが浮かんでいた。
彼がいきなり、

「本当にお前アホだな？」

なんて言ってくるんじゃないかって、怖くて怖くて仕方が無くなった。
無意識に足が震えてくる。


何も聞きたくない。
言って欲しくない。
出来る事ならここから逃げ出したい。

だけどそれは許されるはずもないから、その場で立ち尽くすしか無かった。


…………でも、彼の口から出てきた言葉はやっぱり優しかった。


「やっぱりAさんと居ると楽しいです、仲の良い友達……みたいな感じかな？」


聖夜君の言葉を聞いた瞬間足の震えは一瞬にして収まり、恐怖感も消え去った。


「私も聖夜君が顔見知りの友達みたいで安心します」
「本当？良かった」


そういって笑う聖夜君の表情になんだか少しだけドキッとしたのは私だけの秘密。


「ここ、うるさいね」


確かに車のエンジン音が大きすぎて、段々と耳が疲れてきた。


「場所変える？」
「はい、そうしましょう」


ここを待ち合わせ場所にしたのは紛れもない私達だけど、なんだかミスチョイスだったみたい。
私達は場所を変えて話を続ける事にした。

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