▼時代に肖る ページ43
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あれから暫く考えた
今更告白なんて柄じゃないし、私に関しては彼氏できたこともない
向こうなよくわかんないけど・・・というか一度もそんな話をしたことがないわけで。
然して日は流れ、気づけばもうあと数時間で年号が変わってしまう。
平成時代に生まれて愛着のある時代が終わろうとしている
大袈裟だけどこの時代に生まれて、魁に出会えてよかった。
皆とも仲良くなれて、事務所に所属できて、そして登録者も沢山増えて。
私はこの時代を満足に終わらせられそうだと思った
そう思った矢先の色恋沙汰だ。
「最近ぼーっとしてるわね」
4月30日、午後23時過ぎ
店も閉店後の清掃中だった
「モトキ君のことかしら?」
この人はなんでも的確に当ててくる
私がわかりやすすぎるのかな。まあ、なんでもいいけど
素直に肯けば、若いわね〜なんて笑う
そして手に持った書類を置いて自分が座っているカウンター席の横を軽く叩いた
従って横に座れば、そっと肩を抱かれる
「自分でちゃんと気づけた?好きなんだって」
『いえ、シルク君に気づかされました』
「あらあらw でもちゃんと気づいたのね。偉いじゃない」
『でも怖いんです』
確率は100%じゃない
世の中そんなうまいこと出来ているわけがないから。
告白して、もし断られたら
そりゃ皆ともちょっとは気まずくなると思う。おもに私がだけど。
ただ、それよりも
数十年続いたこの関係が崩れてしまうんじゃないか
再び手に入れた“隣に住んでいて、会いたいとき会える”という関係性が壊れるのではないか
其れが怖かった
『怖いんです、また私は知ってしまったから・・・魁がいる生活が何よりも楽しいことを知ったから』
優しく摩られる肩が温かい
自然と声が震えてきたのがわかった
『なくなって欲しくないんです・・・!!!だって其れでも、幸せだから・・・』
幸せならそれでいい
だから、この感情に名前などつけたくなかったんだ
「でも、その“幸せ”に満足できなくなってきていたんじゃないの?」
『・・・え』
「“今のままで幸せ”だと思うなら、その好きって気持ちも抑えられるはず」
・・・其れは
『それは・・・無理、です』
「どうせ時代も変わるんだし、平成で起きたことは平成中に片付けちゃいなさいよ」
大丈夫、アンタの友達も幼馴染も
たかがそれだけで気まずくなんてならないわ
嗚呼、それもそうか
私はスマホを手にとった
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作者名:Z1GSY x他1人 | 作成日時:2019年6月28日 20時