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「あれは今から約10年ほど前…
王子が17の時です。
隣国との間に広がる森に、狩りに行った時のことでした。」


「おたくも一緒に?」


「ええ。
まだ父から家督を継ぐ前は王子の世話係として
常に行動を共にしていましたので。」


「ふーん…」





やっぱコッチでもショウくんとは付き合いが長ぇんだなぁ…





「その森の奥に小さな泉があって
そこから流れ出す小川が隣国との境界にもなっているのです。
そこで……」





―― 狩りに疲れ、ひと休みしようと

小川のほとりに立った王子が見たのは

その小川の流れ来る先の泉で

お付きの侍女たちと水遊びに興じるカズ王女だった。

ころころとよく笑い、侍女たちと水を掛け合って遊ぶ姿は

それまで自分が見てきた気取った姫君達とは違い

年相応にはしゃぐ可愛らしい少女だった。

そして、それが幼き日の初恋の相手だとわかるのに

時間はかからなかった。


『ショウ、あれは…』

『あちらにいらっしゃるのは、隣国の王女カズ様かと…』

『そうか、やはりカズか…』


王子はそれっきり何も言わなかったが

その人を見つめる眼差しは

これまで見たことがないほど優しく穏やかで

心なしか頰も少し上気して紅く染まっている様に見えた。

たぶんあれが…

サトシ王子がカズ王女に2度目の恋に落ちた瞬間だったのだろう…





「ふーん、そっからまた10年も片想いだったわけか…
でもその前も後もモテモテだったんだろ?」


「ええまあ…王子は基本的に来る者拒まずの方ですので。
ですが王子が自ら望み、あんなにもご執心になられたのは
後にも先にもカズ様だけなのです。」


「ふーん、そうなんだ。」





なんだよ『サトシ』のヤツ

話に聞いてたのとはだいぶイメージ違うな。

もっとイケイケの遊び人なのかと思ってたけど…

10年も片想いって、案外、純情?一途?


そういうことなら、おれもちゃんと身代わりやってやんなきゃな。


…ん?


でもカズは?

王女の方はどうなんだろ…?

ホントにサトシ王子でいいのか?


さっき会った感じじゃ

イヤイヤ来たって風には見えないかったけどさ。


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作者名:author | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年6月1日 17時

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