僕は僕の青春を取り戻す【∞】2 (ページ31)

今日:2 hit、昨日:61 hit、合計:34,674 hit

＃ページ31

◎むらかみさん

2015年5月。

「村上くん、ほんまにすいません。やめとけって言ったんですけど聞かなくて…。」

時刻は深夜24時過ぎ。都内某所の個室居酒屋。

俺の目の前には申し訳なさそうに頭を下げる後輩と、机に突っ伏してすやすやと眠る問題児の姿があった

「いや、こっちこそすまんな。晴人も俺らには言われへんストレスが溜まっとるんやと思うわ。」

赤い顔をして気持ちよさそうに眠る晴人の姿を見て、なんだか無性に申し訳ない気持ちになる。もしかしたらここ数年の俺の小言が、彼にとってのストレスの原因になっていたのかもしれない。

“いつか信ちゃんに成長した姿を見せて安心してもらいたい”

先日、雑誌の連載で目にした彼の言葉を思い出す。
ついイライラして投げかけてしまった言葉を、晴人はきちんと受け止めてくれていた。
俺はそのことに、連載を読んで初めて気が付いたのだ。

大人げなかったし、自分の気持ちばかりを優先してしまっていた。
晴人はきっと自分がうまく話せないことを自分で一番わかっていて、それに苦しめられていたはずだ。ちょっとでも話を聞いてやれれば良かったのに、俺にはそれができなかった。

こんなときに、晴人の傍にいて話を聞いてやれる淳太の存在には、先輩ながらもほんまに助けられている。俺は詳しく知らないが、たぶんあのとき晴人が通院してることを真っ先に伝えたのも、淳太なんじゃないかと思っている。

「ほら晴人起きて！村上くん来てくれたから！」

お酒が回って全く起きようとしない晴人を淳太が叩き起こす。すると晴人は寝ぼけまなこを擦りながらムクっと起き上がった。

『むぅ…淳太？あれ、俺、信ちゃんと飲んでたっけ？』

「違うって。晴人が何しても起きへんから俺が村上くんに連絡したの！ほら、しっかりして！」

淳太に支えられた晴人は目をつむりながらフラフラと歩きだす。柱にぶつかるは転げかけるわ。こりゃもうあかんわ。一回俺ん家連れて帰るしかないかもしれん。

「ごめん、淳太。こいつ一回俺ん家連れて帰るわ。たぶん晴人明日休みやし。」