Article.5 ページ29
◎雑誌連載
【5】
白岡さんが倒れた原因は向精神薬の多量摂取、いわゆる“オーバードース”と呼ばれるものだった。意図的な多量摂取は、自さつ企図を意味することもある。
近年、医師から処方された向精神薬を過剰服用する例が相次いでおり、アメリカでは国際的な問題にもなっている。日本では、精神疾患の患者への多剤多量処方が問題視されており、厚生労働省も対策に乗り出している。
「お医者さんに処方された薬を飲まずに一か月分も溜め込んでいたんです。あの日、なぜ一気に薬を飲んだのかは分かりません。あの日のことは霧がかかっているみたいに、今でも上手く思い出せないです。」
白岡さんが心療内科に通院していたことを、メンバーもマネジャーもこの日初めて知った。
その後白岡さんは精神科のある病院に入院。一年半の休養期間を経て、2012年に復帰した。
しかし、薬は手放せなかった。
休養期間の穴を埋めるように仕事に打ち込む日々が続いたが、心は晴れなかった。自分が精神疾患を抱えていることをファンの人たちに知られたら、きっと失望されるに違いない。慣れているはずのレギュラー番組でも、以前のように上手く話せなくなった。
個人の仕事のオファーはすべて断り、グループの仕事に専念することにした。そうでもしないと、再び心が壊れてしまいそうな気がした。
「どうしても、生きていることに後ろめたさがありました。精神疾患を抱えながら人前に出る仕事をするなんて無理だ、ましてやアイドルなんて夢を売る仕事は、続けられないかもしれないとぼんやり考えていました。」
だけど、そんな白岡さんを支えてくれたのはメンバーだった。特に、横山さんは白岡さんの仕事復帰の後押しをしてくれたという。
「メンバーは、何があっても本当の気持ちを教えてほしいと言ってくれています。甘えても良いよって言ってくれて支えてくれます。今はメンバーに頼りっぱなしだけど、いつかは皆んなを支えられるようになりたい。」
メンバーの話をする白岡さんの表情は、柔らかく優しい笑顔をしている。
「関ジャニ∞に入ったことを後悔したこともありました。でも、こんな素敵なメンバーに出会ったから。今はこの場所を大切にしたいと思っています。そのために変わらないといけないことがたくさんある。課題は山積みです。」
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作者名：さざ波 | 作成日時：2021年2月14日 22時
