僕は僕の青春を取り戻す【∞】2 (ページ19)

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daily.13 ページ19

◎やすださん

2019年4月。

「晴人、どうしたんその髪の毛！？」

『へへっ。染めちゃった！』

松竹座にてトップシークレットで行われる十五祭前夜祭。その当日に、真っ黒な髪の毛が自慢だった晴人が突然髪を染めてやって来た。

「めっちゃ似合ってる～！すごいわ！」

その色はなんと、シルバーアッシュ。
だいぶブリーチをしたみたいで、彼の頭は天使のような白に近い色味をしていた。

『ね？すごいでしょ。これ、メンバーカラーに近づけようと思って。』

「めっちゃブリーチしたんちゃう？」

『うん。引くくらい痛かった。』

そう言って顔をしかめた晴人だが、雰囲気はなんだか晴れやかだった。

あの頃とは違ってもう、誰かの意見に左右されることもない。自分が好きなように生きて、選択できる晴人がそこには居た。

「せや晴人！昼飯食った後の薬飲んだんか？」

しばらくすると背後から村上くんの大声が聞こえてきた。その声を聞いた晴人はまずいという顔をする。

『信ちゃん、ちょうど今飲もうと思っててん。』

「お前忘れてたやろ。」

『てへっ。』

「“てへっ”で許されるかいなあほんだらほんっまに…。ほれ、横で見とくから飲め！」

晴人は今でも毎日薬を飲んで暮らしている。

今の状態が悪いわけではない。
だけど、睡眠や心身のバランスを安定させるためには今もそれが欠かせないのだ。

彼が復帰することが決まったとき、俺らは晴人の病気について少しでも理解をしてあげようと心に決めた。服薬したかを確認するのはもはや日常茶飯事だ。

『もう、うるさいな～。子どもじゃないし一人で飲めるよ！』

ぶつぶつ言いながらピルケースを開ける晴人。
カプセルをまじまじと見つめながら、最終的には目を閉じて一気に口に放り込む。

今では見慣れた光景。

だけどいつか、彼の手から薬が手放される日が来て欲しいと願う自分もいる。

「あ、そうや晴人。昨日言ってた振り確認せんでいける？」

『あーそういえば言ってた。確認したい！』

「おっけー。やろか。」

『うん。お願いします安田先輩！』

「急に後輩感出してくるやん～。」

『へへっ。なんか松竹座来たら昔のこと思い出した。』

昔、安田くん安田くんと言ってひょこひょこと俺の後ろを付いてきていた晴人。

年月が過ぎて僕たちもお互い大人になった。だけどたぶん、晴人は俺の中で永遠に守ってやりたい弟であり続けると思う。