100：逃げ ページ8
▽．
ガザゴソと入口の方から音がして、カーテンに巨人の影が写る
『盗み聞きとは悪趣味だね』
「不可抗力やっ！」
なんであんな修羅場に遭遇せなあかんねん．．．なんてボソボソ言ってる侑
『この間は土曜だったからあれだけど、今日平日じゃん。部活は？』
「今日はオフ」
ん、とノートのコピーを差し出す侑
普段ノートなんて書いてないのに、わざわざ書いてくれたんだろうか
何だかんだ優しいよね、侑って
『ありがと』
ノートのコピーを見ると、高校二回目だから全部分かってる内容ばかりで
とはいっても、忘れているところはあるし、なにより侑が優しいのなんて珍しいのでありがたく読ませてもらう
病気とか風邪のときって、みんな優しくなるよね
病人の特権〜、なんてふざけて誤魔化そうとするけど
頭の中には“逃げないでよ”がこびりついていて
「．．．なんか言いたいことあるなら言えや」
侑がため息をつきながら言う
さっきから、侑のことをチラチラと見ていたからだろうか
『．．．私って逃げてる？』
何から逃げてるのかは、多分バレーボールから
「．．．まあ、逃げとるんやない」
机に置かれたバレーボールに目をうつし、侑はそう言った
「鏡見てみい。お前、今めっちゃしけた面しとるで」
死んだ魚の目しとる、そう言われて反論しようとしたら、ほいっとボールが放られる
もはや反射で、オーバーで返すと侑もオーバーで返す
なんとなくラリーが続いて、侑が口を開く
「でも、今はめっちゃキラキラした目しとる」
ぽんっと、ボールを侑がキャッチしてラリーが終わる
「バレーバカが、バレーボールから逃げられるわけないやん」
ぐうの音も出ない
確かに、私がバレーに関わらずに生きていくとか無理な話だ
本当はそんなこと、とっくのとうに気がついてた
“バレーにはもう関わらない”
そんなのふて腐れた私が吐いた嘘だった
でも、
『でも、もうバレー出来ないし』
もう出来ないから、自分の欲に蓋をした
侑は少し考えた後、「マネージャーやれば」と呟いた
いい案だと思ったが、やっぱり私は自分が出来ないことをやっている人を支えられるかは分からない
多分、女バレでマネージャーなんかやったら羨ましくて耐えられないと思う
かつての自分と比較して、みじめになるのがオチだ
「ちゃうて、男バレのマネージャー」
．
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初月(プロフ) - ユキナさん» ありがとうございます！！更新がんばります！ (2022年2月9日 17時) (
レス) id: d18d3b542f (このIDを非表示/違反報告)
ユキナ(プロフ) - 最初から読み始めておもしろくてすぐ読んじゃいました！！更新頑張ってくださいね！ (2022年2月5日 23時) (レス) id: fcc38ebda0 (このIDを非表示/違反報告)
初月(プロフ) - おもちさん» えぇ．．．嬉しいです(泣)ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年9月28日 17時) (レス) @page24 id: 35c19a5e2a (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - この作品ちょー好きです！！これからも応援してます！！ (2021年9月24日 20時) (レス) @page21 id: 0550ba15c4 (このIDを非表示/違反報告)
初月(プロフ) - 凛／月影／霖さん» ありがとうございます！！ここからの展開はもう決めてあるので、どんどん更新予定です！ (2021年8月20日 11時) (レス) id: 35c19a5e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：初月 | 作成日時：2021年8月17日 9時
