▼すべてのはじまり ページ1
「さて、保護したはいいものの……これからどうしよっか？」
僕たちの目の前には、ボロボロの服を着て不安そうに佇む女の子がいる。綺麗好きなメンバーが日々掃除に明け暮れるぴかぴかの共用ハウスとその少女は不似合いすぎて、ちょっぴり信じられない。なんども瞬いて、ああ現実なんだな、ということを認識する。
「まあ、当面は家から出さずに健康になるまで待つのが一番じゃないですか？」
そう言うのは西のヒーロー、Dyticaの星導ショウ。普段はのらりくらり、飄々としていて付き合いの長い僕達でも雰囲気を掴みきれないことのある彼だが、いざという時にはそのヒーロー歴の長さから的確なアドバイスを寄越してくる、なんだかんだ言って頼りになる男だ。
まあ、このメンバーで頼りにならないヤツなんていないわけだが。だってヒーローだからね。
「せやな……こんなボロボロなんやったらお外で怖いこともぎょうさんあるやろし。な？」
心配そうにしゃがんで女の子の顔色を確かめる彼は僕と同じ東のヒーロー、Oriensの緋八マナ。困っている人を放っておかないヒーローの性根ゆえか、生来の世話焼きな性格ゆえか、もしくはその両方か。僕達8人の中でも、特にこの子を気にかけている様子だった。
女の子も、保護当時からずっと気を遣ってくれるマナにはほんの少しだけ心を開いているようで、問いかけに小さく頷いている。
「やっぱそうだよね、俺たちでちゃんと面倒見ないと」
震える姿を見て決意を新たにしたのは、Dyticaの伊波ライ。保護するにあたって本部と表立ったやりとりを続けてくれたのは、実はライだったりする。ライのそんな一直線で真っ直ぐな所を見ると、やはりヒーローの擬人化のような男だと感じる。しかし、だからか、今一度自分たちに課された責任を再確認しているようだった。
「ま、そんなに肩肘張んなって。ピリピリしてたらこの子も怖がるだろ」
ライの肩を叩いたのは、Oriensの宇佐美リト。軽い調子ではいるが、いつもの調子の良さと声のデカさはなりを潜め、なるべく怖がらせないように、と気を遣っている様子だった。ま、この男はこれでいて繊細なハートの持ち主が故。こんなちみっちゃい女の子に嫌われでもしたらしばらく立ち直れないのだ。
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作者名：うすて | 作成日時：2025年9月3日 19時
