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ロビーから2階へと続く階段を駆け上がる。
勇斗「A！いたら返事しろ！！」
もしもAの身に何かあったのなら、俺はそんな不安と恐怖が押し寄せる中、あいつの名前を叫んだ。
勇斗「A！！！」
A「勇斗？！」
勇斗「っ！」
俺の声が届いたのか、Aの声が、2階の方から聞こえてきた。
良かった……。
それだけで、頭や頬や腹を殴られた痛みも吹き飛んで、足取りも軽くなって俺は2階の入り口の扉を押し開けた。
そしてそこには、Aと夏生さんの姿がちゃんとあったのだ。
勇斗「A！良かった……！」
A「勇斗……。良かった、帰ってきてくれて……」
俺が出ていった時と変わらぬAの姿。
何かあったわけじゃなかったようだ。
それにしても、なんでこんなところに……。
A「ね、ねえ、なんか傷増えてない？！それに、頭の血、どうしたの？！それに舜太君も……」
勇斗「あ、いや、これは……」
何と説明してよいのやら。
正直に話してもいいのだけど、そんな話をして、Aを不安にさせるのも嫌だし……。
と、俺が言いあぐねていると、階段の方からまた足音が聞こえて、仁人が入ってきたようだった。
仁人「俺がやったんだよ……」
夏生「じ、仁人……？！」
後から入ってきた彼の姿に、夏生さんもAも、心底驚いた表情を浮かべていた。
そりゃそうだ。
Aに至っては、襲われた相手なんて、見たくもないだろう。
夏生「もうやめて……！これ以上皆のこと傷つけるのはやめてよ！」
勇斗「大丈夫。もう、大丈夫だから、多分……。あいつも、何となく、分かってくれたって言うか……。Aは、嫌かもしれないけど……」
A「……」
俺のそんな曖昧な言葉に、Aは何かを察してくれたのか、複雑な表情を浮かべていた。
俺の理想である、全員で助かる方法を探すということと、Aにとっては襲われた相手を受け入れろっていう、俺の自分勝手な考え。
こういうところが、仁人のいう俺の自分勝手なところなんだろうな。
そして、こういうところが嫌いなんだろう。
何となく、俺自身もわかってきた。
けれど、普通の生活ならつゆ知らず、こんな俺達の常識が通用しない世界で、そんなことも言ってられない。
Aは、分かってくれるだろうか。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年8月11日 17時
