22 ページ22
仁人の運転でかれこれ2時間弱。
この砂漠での、俺達の家とでもいうべき映画館へ帰ってきた。
道中はどうなることかと思ったけれど、何とか3人とも無事に帰ってくることができた。
車中ではほとんど何も言ってくれなかった仁人だけど、それでも、ここを出発した時よりは、俺達の仲はマシになったと思う。
勇斗「運転してくれてありがとう、仁人」
仁人「別に……。
っていうか、勘違いしてるみたいだから言っとくけど、俺は別にお前らと仲良しこよしで慣れ合うつもりなんかない。
俺は自分が助かればそれでいい」
勇斗「……分かってるよ……。
それに、それを言うなら俺だって、今度Aに手出したら、俺がお前を殺すかもしれない……。
だから、もう二度とあんなことしないでくれ……。
それからAに、ちゃんと、謝ってほしい」
仁人「は？俺が？」
勇斗「あいつには、これ以上怖い思いをさせたくない……。
Aのあんな顔、もう見たくないんだ……」
仁人「……はぁ……。わかったよ……」
何だか随分と聞き訳がよくなって、少し不気味だったけれど、俺と舜太に助けられて、ちょっと丸くなってくれたのかな。
いや、元々こういう人だったけれど、この砂漠での非日常が、彼の心を滅茶苦茶にしていただけなのかもしれないな。
それに、そういえば夏生さんも言っていたっけ。
本当は優しいところもあると。
舜太「あれ？皆どこ行ったんやろ？」
ふいに、先に映画館に入っていた舜太がつぶやく。
確かに、ロビーには誰もいない。
それに、なんだかやけに静かだ。
勇斗「シアタールームの方は？」
大きくて重たいシアタールームの扉を開けて中を覗いてみるが、いまだに不気味に動き続けている映写機の音が響くだけで、ここにも誰もいない。
舜太「倉庫にも、トイレにも、誰もいませんね……」
映画館の目につくところはあらかた見て回ったけれど、Aと夏生、太智の3人の姿がどこにも見当たらない。
まさか、俺達が出て行っている間に、何かあったのか？
舜太「2階に行ってみましょう！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：milkssss | 作成日時：2020年8月11日 17時
