【M!LK】漂流シアター～Winding Road～ 2 (ページ17)

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急に車のエンジンがかかり、仁人がその物音に振り返ると、車のヘッドライトがハイビームになって彼を眩く照らし出した。

仁人「うっ？！眩し……」

薄暗い中、急に眩い光に照らされた仁人はそのあまりの眩しさに目をくらませ、俺を手放してバランスを崩す。

仁人「あ……」

勇斗「っ？！」

そして、仁人の体は切り立った地割れの縁を踏み外し、その真っ暗な谷底へ滑り落ちていく。
人の最期なんて、結局はこんなにあっけないものなのかもしれない。
誰かの死、なんて見たことはないけれど、例え赤の他人でも、俺を殺そうとした相手でも、人が死ぬというのは何とも心苦しくて、切ない。
俺がもっと他人の為に考えて行動できていたなら、こんな結果にならずに済んだんだろうか。
皆で手を取り合って、この砂漠の世界で生き抜く術を探すことができたのだろうか。
こいつが俺の目の前で死んでいくのを、見ずに済んだのだろうか。

俺は一体、どうすれば良かったんだ。

そんなの、誰も知らないだろう。
俺が何をどうすればよかったかなんて、誰にもわからない。
何が正しくて、何が間違っているのかなんて、誰が知る由もないんだ。
この結末は、俺自身が選び取ったんだから。

けれども、もしも、後悔したくなかったら、全力で振り切れ。
全力で正解を勝ち取れ。

俺は、後悔なんてしたくない。

仁人「……？！」

だから俺は、谷底へ落ちていく仁人の手を、必死に掴んでいた。

勇斗「ぐっ……」

仁人「何してんだよ……？！放せよ！！」

勇斗「馬鹿……動くな……！！」

とはいっても、仁人の体を引き上げるほどの力はすでに残ってない。
今こうやって掴んでいる手も、いつ手放してしまうかもわからない。
もしかしたら、このまま二人一緒に谷底へ落ちてしまうかもしれない。
けれど、それならそれでいいんじゃないかと思う。
仁人一人を谷底へ落としてしまうよりかは、まだ。

舜太「勇斗さん？！何してるんです？！」

すると、後ろで舜太の驚いた声が聞こえてくる。
きっと車のヘッドライトを点けてくれたのも舜太だろう。
彼は彼の正解の為に、俺を助けてくれたんだ。
でも今は、俺の正解の為に、手を貸してほしい。