Time goes by (ページ46)

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俺達はどうして嫌いなもののために500円を払ったのだろうか。

「ねえ、本当に行くの……？」

『行くよ。せっかく払ったんだから入らなきゃもったいない』

部活が終わり、本当に遊園地へやってきた俺達はおばけ屋敷の前で揉めていた。

「ふっか譲ってよ。俺後輩だよ？」

「馬鹿野郎！後輩も先輩も関係ねえよ！」

せっかくだから2人と1人に分かれよう。女の皮を被った鬼が楽しそうに提案してきた。俺と照が2人になると多分永遠に出られない。必然的に俺達はAをかけてじゃんけんをすることになった。

「ぜってえ負けねえ」

「俺だって負けたくねえ！」

「「最初はグー……、じゃんけん！」」

俺はパーを、照はグーを出している。一瞬の勝負が天国と地獄に分けた。

「よっしゃあああ！！！」

この世の終わりかのように握り拳を見つめる照を横目に俺はAに擦り寄った。

『私はふっかと入るわけね？』

「よろしく」

2人で入れば怖くない……はず。でもその前に注意しておかなければならないことが1つだけある。

「お前絶対驚かすなよ？」

『えー、ダメなの？』

「あたりめえだ馬鹿！」

ただでさえおばけにビビっているのに、Aにまで脅かされたら何も信じられなくなる。

「絶対離すなよ……？」

『分かったから。じゃあ入ろっか』

俺はAの腕を掴んだ。鍵付きのシューズボックスに履いてきたスニーカーを入れる。こうして俺達は暗闇の中へこの身を預けた。
インターホンを鳴らすと物語はスタートする。舞台は主人公となる女の婚約者の家だ。男に裏切られた女の怨霊がベースになっているらしい。

『めっちゃくっつくやん』

「俺本当に無理なんだって……」

『んははっ！』

不気味な雰囲気の室内に似合わない快活な笑い声が響く。俺はAにくっついていなければ歩けないというのに、Aは余裕綽々で前に進む。

「うあああっ！」

『おお』

足を掴まれても、破裂音が鳴っても、人が出て来ても怖がらないし驚きも小さい。

『ふっか、大丈夫だって』

「大丈夫じゃねえよぉ……！しりとりしようよ……」

『しりとり？』

「りんご……」

『ゴリラ』

「ラッパ……」

『パパ』

「パ？ ……あああっ！！！」

『んははは！』

おばけが引くほどの耐性。俺ばかり怖い思いをしている。悔しい。俺達は約10分の探索を終えた。