Time goes by (ページ37)

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男女の友情ページ37

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日比谷のこぢんまりとした喫茶店。暖色の照明が薄暗い店内を灯す。隠れ家の面構えなこの場所が私と彼の秘密の場所だ。10日前、9月から続いていたミュージカルの公演がようやく大千穐楽を迎えた。
稽古も含めると7月からずっと取り組んできた。半年間の長い戦いが終わり、心にポッカリと穴が空いた気分だった。

「お疲れ」

『ありがとう。ふっかもお疲れ』

「おう。ありがと」

夜はバーを兼ねているこの喫茶店で私達はいつものようにコーヒーと無糖カフェラテ、ニューヨークチーズケーキをいただく。
マルグリット・アルノー。彼女として生きた日々は私にとってかけがえのない思い出になった。自信にもなった。

「お前本当よく頑張ったよ。よく逃げずに大千穐楽迎えられたよ」

『逃げずに頑張れたのかな……』

公演を終えた今、私は自問を続けている。マルグリットの貧しさや大切な存在を失う悲しみを上手く表現できたのだろうか。
正義の暴走を目の当たりにし、自身の求めた平和や平等に失望するする姿。情報に翻弄される民衆。お客さんに伝わったのだろうか。大千穐楽から随分時間が経つのに今でも不安だ。

「はぁ？お前あれだけ頑張ったのに何言ってんの？」

『だって私ふっかに頼りきりだったじゃんか』

結果的に私はふっかの支えなしでは心も体も持たなかった。限界を超えたかったのに超えられなかった。

「馬鹿野郎。お前はね、頼らなさすぎなの！」

『頼らなさすぎ？』

「寝れなくなるまで我慢して、楽しい話してんのに急に泣き出すまで心の調子悪くして俺がどれだけ心配したか分かってる？」

『……その節はご迷惑をおかけしました』

「だからさぁ、迷惑とか思ってねえんだって」

何回も言うけど、とふっかはジトッと睨んだ。

「俺は頼ってくれたら嬉しいの。俺にとってAは大切な存在だから、本当は無理してほしくないの。でも無理なのも知ってる。それなら、お願いだから限界超える前に頼って？俺お前が苦しんでるとこ見たくないよ？」

ふっかは優しげな声と縋るような目で訴えかけた。最近になって私はふっかのこの目に弱いことを知った。優しさから生まれた、優しさでできているとしか思えないほど底なしに穏やかで優しい。だから頼ってしまう。

でも人に無理をしてほしくない、と言いながらふっかが気負いすぎるのを私は知っている。