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俺が別れを告げたら必然的にAは次の出会いを求めるはずだ。アイドルに縛られない男達ならば、年上年下同い歳関係なくAを普通の女性に戻せるだろう。
20代での結婚や妊娠や出産は叶わなくても、家庭を築くのにそう時間はかからないはずだ。
「でもできひんのやろ？」
康二は核心を突いた。
「……無理。できない」
もしAと別れたら、この先俺のことを俺以上に理解してくれる女の子が現れるのだろうか。
潔癖で、人の思いの裏を読もうとする癖がある。だらしない所も遠慮なく見せる。本当は人に嫉妬するのもされるのも苦手だ。甘えるのも苦手で人に頼られるのは好きだけど、頼ることはできればしたくない。
プライベートはアイドル深澤の面影もないほど下心旺盛だし、どこにでもいる30歳として生きている。現実しか見せない。
「俺もしAと別れるようなことがあったら、恋愛できなくなると思う」
Aは俺のダサい所も受け入れてくれるけど、他の女性達が受け入れてくれるとは思えない。俺に夢を見る人達は特に。
「結婚もしない気がする」
「じゃあ別れなければええやん。簡単なことやで？」
康二はあっけらかんと言った。
「そうだけどさぁ……」
「というか、ふっかさんを焦らすようなことを言うたん？ Aさんは」
「言ってない」
一言も聞いていない。
「じゃあますます別れる必要ないやんか。ふっかさんの悩みは分からんでもないけど、Aさんが急かさないのは焦ってへんからとちゃうん？」
「それは……」
そうなのだろうか。顔に出さないだけでプロポーズしてこない、と不満を溜めているのではないか。
「そもそもちゃんと結婚の話とかしてんの？ 昔は20代でしたかったかもしらんけど、今はどう思ってるか、ふっかさんは知ってんの？」
「……知らない」
20代で結婚したい、子供を産みたいという発言は学生の時に恋バナをしていて聞いた。今のAが結婚や妊娠出産をどう考えているかは全く分からない。ただ、互いが最後の恋愛相手で、人生の伴侶になりそうなのは漠然と感じている。
「そっちの方が問題やろ」
康二は呆れ、憐れむように俺を見つめた。
「俺も同級生が結婚しだしてるから思うけどな、臭いもんに蓋して現実見られへん、真面目な話し合いができん男は結婚してもすーぐ飽きられるで？」
ドキッとした。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月27日 21時
