重いかもしれないけど ページ27
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舞台に怪我は付き物だと思う。時にはキャストが降板するほどの大きな怪我に見舞われることがある。
でも大抵が小さい怪我を隠して板の上に立つ。カンパニーの誰かしらが傷やアザを作っている。タコができたり、できたマメが潰れてしまったりすることもある。
お風呂に入るために服やブラ、ショーツを脱ぐ。裸になって浴室に入る。今回も脚や腕にアザができていた。治りかけからいつの間にやらできたのか分からないできたてまで、ちらほらと見受けられる。これも頑張った証、決して無駄にはしない。しないけど。
「なあA、今日風呂いーい？」
『ダメ！』
頭も身体も顔も洗った頃合いを見計らったようにそんな誘いが耳に入った。辰哉くんの彼女としての自分に戻ると気になってしまう。今日の公演で手のひらのマメが潰れた。それは辰哉くんも知っている。
「え！ なんで！？」
もう1つ、私には手のひら以外の傷があった。服で見えない部分ではあるけれど、公演前に殺陣をしていたら共演者の剣が当たって太ももの付け根にぶつかった。切り傷とそれなりに大きなアザができ、病院に行くほどではなくても腫れた。
残念ながらしばらくの間、見せられる脚ではない。
『なんでも！』
一緒にお風呂は付き合った頃は何度か断ったけれど、ここ数年はほとんど受け入れていた。
「生理……？」
『違う』
だからこそショックなのか、辰哉くんはドア越しに棒立ちになっていた。猫背がしょんぼり肩を落として落ち込んでいるのが1枚ドアを隔てていても分かる。
『アザできた』
隠し事をされるのが苦手な私が隠すのは意に反している。だから正直に言った。
「アザ？」
『あんまり見せられないアザ』
「そんなに酷いの？」
『ここ何年かの中では酷いかなあ……』
今日は腫れを少しでも収めるため、マチネとソワレの間はずっと氷嚢で冷やしていた。それでも腫れてしまうのだから、きっと私は明日の公演前に病院に行く。
「じゃあなおさら見なきゃじゃん。生理じゃないなら入る」
どうしてそうなるのか。辰哉くんは医療知識にはそれほど詳しくないはず。すぐにドアが開く。準備万端、既に真っ裸だった。
『断っても入るつもりだったでしょ』
「それはそうだよ。当たり前じゃん？」
相変わらず色白で透き通っている。華奢でもちゃんと筋肉があって無駄にドキドキする。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月27日 21時
