Time goes by 2nd (ページ13)

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辰哉くんの部屋に行こうと思いながら洗面所で髪を束ねていると、部屋のロックが解除される。

泥棒かな、何が悪巧みを企んでいるのかな、と言わんばかりに静かに玄関のドアを開けた辰哉くんはなぜか顔が強ばって緊張していた。

『おかえり』

「ただいま」

『どうしたの？緊張して』

「あの、話したいことがあって」

そのまま私に近づき、後ろから抱き着いてくる。見た目は華奢でもやはり男性だ。細くもちゃんと力のある腕。血管が浮き出ている。

『話したいこと？』

「おう。でもちょっと待って？心の準備してたんだけどAの顔見たら言葉全部飛んだ」

『分かった』

でも何がどうなって私の顔を見て緊張することになったのか分からない。しかも言葉が飛んでしまうほど。

どうやら別れ話の類ではなさそうだから、辰哉くんが切り出すのを淡々と待つ。沈黙が続く。時が止まったかのようだ。

「……A」

『ん？』

切り出されるのを待ち続けていると、ようやく口を開いた。その声には力と緊張が混じって少し掠れていた。

「Aはさ、いつまでに結婚したい？」

『え？結婚？』

思わぬ質問だった。辰哉くんと結婚について話すのはいつぶりだろう。

『血の痕じゃなくて？』

「なんでだよ。違うよ、血じゃなくて婚姻届出す方な？」

結構真面目だから。辰哉くんはかすかに熱を込めた。

「その……、俺、お前の20代で結婚したいって目標叶えられなかったから」

『なんだ、そんなことね？』

「そんなことって……、大切じゃねえの？」

どうやらそこが不安だったらしい。

確かに私は20代で結婚したかった。妊娠や出産もできれば20代で経験したかった。子育ては体力勝負だから、無理ができる20代のうちに1人でいいから産みたかった。2人目以降は余裕ができた30代になってからでもいいかな、と。

『誰に何言われたか知らないけど、目標じゃないよ。あくまでも夢の1つであって。私、20代で結婚できそうにないからって辰哉くんを嫌いになったりしないよ？』

でもお互い今は仕事を優先させたい。

20代でできなかったからなんだ。今どき30代になってから結婚する人も多いじゃないか。

『いつまでに絶対にってことはないかな。ざっくりと40までに家族になれたらいいんじゃない？』

焦って失敗するよりも、じっくりと愛を育む方が私達には向いている。