乾いた音_5 ページ5
その後、
松田たちを連れて警視庁を出た永倉と鬼塚。
「松田！！」
そこに現れたのは、伊達だった。
「…桜庭の弟は見つかったんだな。警視庁で騒ぎがあったと聞いたんだが...」
鬼塚と永倉が捜査一課に現れたのは、
警察学校の生徒が騒いでいると連絡を受けたからだった。
そして、優也を探し、この付近まで戻ってきた伊達は、
警察学校内で噂程度に話を聞き、今しがた駆けつけたところだった。
背格好など特徴は聞いていたものの優也のことは良く知らない伊達は、
Aが寄り添うように立っている男を見やり、少し表情を緩めた。
しかし、2人の教官に加えて自身の班員たちが揃って立つ様子に、すぐさまその顔に険しい影を落とした。
「もしかして…、お前ら…」
「確かに、騒ぎはあったようだが、もう解決している。
少し、鬼塚教官と…話は必要かもしれないが」
「…そうですね」
頭を抱えたような様子で、永倉に答える鬼塚。
当の松田は不機嫌そうに何も言わず、
萩原と降谷は、伊達に、複雑そうに重い苦笑いを向けていた。
そして、
「よ...、良かった…！！見つかったんですね！！」
続いて駆け寄ってきたのは、数名の男たちで。
安堵した声を漏らしたのは、小嶋だった。
『あ…、す、すみません…、連絡...』
力なく口を開いたAに、
他の刑事も一緒に優也を探していた小嶋は静かに首を振った。
先ほど、優也が無事に見つかったと目暮から連絡を受けて戻ってきたのだ。
警察病院での事件のこともある。
何らかの事件に巻き込まれた可能性も充分に考えられたことから、
小嶋は心底安心したように、肩を大きく脱力させた。
「良かった…」
申し訳なさそうに伏せ目がちに頭を下げた優也。
彼だけでなく、Aの目元に涙が滲んでいることに、
小嶋は心配そうに眉を寄せ、周囲の松田たちを見つめた。
「…何か、ありましたか？優也くんは...」
『…え、えっと…』
言い淀むAを前に、
「…ご、ごめん...なさい。
勝手に、…出かけて、...しまって」
と、小さな声を漏らした優也。
思い詰めたような表情で明らかに泣いた痕のある赤く濡れた目をした優也が気にかかるものの、
事件に巻き込まれた訳ではなさそうな様子に、
小嶋は、周囲の刑事と軽く顔を見合わせ、
「ホテルに、戻りますか…？」
とAに提案した。
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作者名：white12
| 作成日時：2023年2月7日 18時
