クリスマスのざわめきの中で_5 ページ24
『…住宅街。やっぱり──』
まだ確証はないものの、どうやら予想は外れてはなさそうで。
Aは睫毛を伏せるようにして、静かに歩を進めていた。
1つ路線を乗り換えて電車に揺られること20分ほど。
芝浜付近の駅から少し歩いて入り込んだ先は、大きめの一軒家が立ち並ぶ住宅街だった。
“今から帰る”
その言葉と、今日から2日間の休日だと言うことも考えれば、
実家に帰るのかと想像するのはそう難しいことでもなくて。
ただ、Aの推察の本質はそこではない。
尾行してきたものの、何か考えがあった訳でもないAは、
焦りとともに組紐のように絡み付いたいくつもの感情を全て飲み込むようにして大きめの息を吸い、
一定距離開けた先の斉木の姿を見つめた。
ひんやりとした空気に包まれる住宅街は静かで。
塀や電柱に身を隠しつつゆっくり歩いていたAの視線の先で、
斉木が立ち止まった。
一瞬警戒したAだが、
斉木は振り向くことなく、片手を上げて目の前の住宅のインターホンに指をかけた。
白を基調とした2階建ての一軒家。
上品な雰囲気とスタイリッシュな雰囲気が合わさったような、高級そうな外観の家だ。
玄関先のシックに飾り付けたリースは、
周囲の家の庭に見えるサンタの装飾よりも存在感を醸し出していて。
冬の太陽は、あっという間に傾いてしまうもので。
16時にもなっていないのに、
既に赤を交え始めた陽の光がその白い外壁を優雅に照らしていた。
目をこらせど確認できない距離ではあるが、
おそらく、表札には”斉木”と書かれているのだろうと、
Aはさらに目を細めて、斉木の立つ位置から何段か階段を登った先にある玄関のドアを凝視した。
深みのあるインターホンの音が響いた数秒後。
開いたドアの先から顔を覗かせたのは、1人の女性だった。
50代くらいに見えるその人物は、おそらく斉木の母親だろうと考えていたAは、
直後、目を大きく鋭く見開いた。
女性が半分ほど開いたドアの奥に、
あの男、──斉木の兄の姿が見えたからだ。
ドクン、とひときわ大きく心臓が跳ねたのを感じた。
クリスマスのざわめきの中で_6→←クリスマスのざわめきの中で_4
125人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
white12(プロフ) - さゆりさん» 嬉しいコメントをいただきありがとうございます。更新が滞りお待たせしてしまって申し訳ありません。また,体調についてもお気遣い本当にありがとうございます。更新頻度がまちまちで申し訳ない限りですが,引き続きお楽しみ頂けると幸いです。 (2022年8月31日 19時) (レス) id: 5b5db755e5 (このIDを非表示/違反報告)
さゆり - 更新ありがとうございます!これからどうなっていくのかドキドキしています。体調が悪いとおっしゃっていたので、どうぞ無理はしないでお大事にしてください。続きを楽しみにしています! (2022年8月30日 20時) (レス) id: 2b8084ecea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:white12 | 作成日時:2022年8月4日 18時