金曜日のたこ焼き (6)【名探偵コナン】

エピローグ1: 夜の杯戸町_3 ページ19

「…」

『あ、でも。もう、…そういうつもりで、ここに来てる訳じゃなくって。
今日は、…報告も込めて…』

「報告？」

『...これまでの、こととか、
えっと、ま、...松田さんのこと、...とか、...色々...。
非番じゃないから...、お墓には、また今度なんですけど』

「…」



ますます話が掴めない萩原だったが、
2人の真剣な様子から、
口を挟めるものではないことを理解して、こっそりこの場を去ろうとしたのだが、



『それと、…その――、…会えるかもって思って、…ぼんやりしてたというか』


「…は？」


松田のその一言に呼応したように、萩原がふと足を止めた。



『あ、…前にもここで、会ったじゃないですか。
今みたいに、…萩原さんと一緒に歩いてる、…松田さんと』

「…」


全く話を掴めていない萩原だが、
こういう勘は鋭くて。

なるほど…と、軽く頷く仕草をしながら2人を交互にちらりと見つめた。



「…なんか話でもあったのかよ。連絡くれれば――」

『あ…、そうじゃなくって、…ここに来たのは、さっきも言った、
颯太に…報告したかったから、なんですけど…、
偶然、…会えるかもなぁとか…思っちゃって。』


小さく気恥ずかしそうに笑ったAは、


“当たり、でしたね”


と、表情を隠すようにして、
俯きながらヘヘッとはにかんだ。








そして、


『すみません。変なこと言うて。
…じゃあ、また、明日』


と、ペコリと頭を下げて、くるりと踵を返したA。



「じゃ、俺、先に帰ってるわ」

「...は？」


去っていく彼女をしばし固まりながら見つめる松田に、
コソッと告げて、萩原は隣の路地へスタスタと去っていった。



気を利かせたというのは明白で。





松田は、空を仰いではぁと大きなため息をつくと、
先ほど彼女が見つめていた地面に視線を落とした。


当然、会ったこともない、
捜査資料の写真すらも見たこともない人物だが、

彼女の大事な弟が、

命を落とした場所だろうことを理解して、
軽く目を閉じるような仕草をした。


そして、
顔を上げて目を開ければ、
目の前には、
会いたかったとでも言わんばかりのことを口にしたくせに、
スタスタと背を向けて歩いていくAの姿。



「…っとに、世話の焼けるヤツだな」



と、柔らかいため息を零し口角を上げた松田は、
足早にその姿を追いかけたのだった。

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