金曜日のたこ焼き_3 ページ14
『……！』
口元に触れたと思ったら、
唇を撫でるかのようにほんの少しだけ動いて離れていくその指。
その行為にAは目を小さく見開いた。
そこにはわずかにソースが付いていた。
先ほど、開けようとした口が完全に開く前に口元についたソースだ。
松田が意味の分からない八つ当たりのような文句を口にしたせいだと言えば、
そういうことなのだが。
Aの見開いた目がさらに開かれたのは、その直後で。
『…………！！』
Aの視線の先で、
ペロリとその指を舐めて、顔をしかめた松田。
Aは驚きと同時に、たこ焼きをゴクンと飲み込んだ。
戸惑っている彼女には実にゆっくりした動作に見えたのだが、
その松田の行為は、
流れるように自然に行われた一瞬のことだった。
そして、
しばし固まっていたものの
気恥ずかしさからか驚きからか、とっさに残ったお茶を飲み干したA。
ペロリと指先を舐めるその仕草はもちろん、
最近、現場に行くことが少なかったからか、
サングラスを外していることが多かった彼は、
改めて見ると、今更ながらに整った顔立ちをしていることを認識した訳で。
休憩中の今も、それが明らかにわかる訳で。
だから――不覚にも心臓が高鳴る訳で。
何より、あの資料室での時間が、思い出される訳で。
「やっぱ、ソースの味とは合わねぇよな」
『…………は？』
そんなAの戸惑いを知ってか知らずか、
松田は、ゴクリと再びコーヒーを口にし苦笑いをした。
人のたこ焼きを奪っておいて…、
人の――、いや、そういう表現もおかしいのだが、
口元からソースを勝手に拭っておいて、
それを勝手に口にしておいて…、
どんな八つ当たりだ。
Aにとっては文句の1つも口にしたいところだが、
優しげにニヤリと笑った松田が再び背を向けて自販機に向かう姿を見て、
恥ずかしそうに小さく俯いて口元に手を当てただけで。
だって、どうしたってじわじわと――思い出してしまうから。
指で触れられれば、
そこに、温度が与えられれば、
――嫌でも、思い出してしまうから。
『…文句言うなら、…食べんかったらええのに』
ガタン、という音が耳に聞こえたと同時に、
軽く俯きながら悩ましげに眉を寄せてポツリと呟いたA。
「…うるせぇよ」
そして、
頭上から零されたふわりとした声と、
目の前にコトンと置かれた何か。
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white12(プロフ) - souさん» 嬉しいコメントを頂きありがとうございました。関西弁の夢主は初挑戦でしたが，お楽しみ頂けて良かったです。ラストの甘い雰囲気も，ご満足頂けていたら嬉しい限りです。最後までお読み頂きありがとうございました。 (2022年4月4日 13時) (
レス) id: 35753a7d46 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 最後のところ松田さんが甘くてにやにやが止まりませんでした♡関西弁の夢主設定も可愛い！ (2022年3月24日 18時) (レス) @page26 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 金糸雀さん» 本作をお読み頂きありがとうございます。お褒めの言葉，とても嬉しく思います！また，リクエストも頂きましてありがとうございます。現在執筆時間がほぼ無い状態のため，お約束は出来ないのですが，もし書けましたらエピローグ的にupさせて頂きたいと思います。 (2021年5月10日 19時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - とても素敵な作品でした！松田さんの言葉遣いや捜査一課の面々とのやりとりは見ていて面白かったです！これは、リクエストなのですが、夢主ちゃんと松田さんがポアロで安室さんと話すシーンが見たいです！時間が御座いましたらで構わないのでお願いします！！ (2021年4月25日 15時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - ミックさん» お返事が遅くなり申し訳ありません。下記作品は、作者の都合により公開を停止しています。申し訳ありませんが、ご了承くださいませ。 (2020年10月26日 21時) (レス) id: 9553187897 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：white12
| 作成日時：2020年7月31日 19時
