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耳打ちされた指示 ページ12

ピッ…ピッ…






規則的な電子音にゆっくり目を開ける。

喉が枯れているのか上手く声が出せず、
無意識に口元に手をやると、
呼吸器をつけられていることに気づき、当然のようにそれを外すA。


(…ここ…警察病院、か)


ゆっくり身体を起こせば、右腹部にひどい痛みが走る。
ぼんやりした頭で記憶を手繰り、
米花町の交差点で、黒いジャケットを着たマスクの男に刺されたということを思い出した。


『…やられた、わね…』


包帯を巻かれているだろう腹部に手をやると、
もう一度そこに強い痛みが走り、Aは大きく顔をしかめた。


外は暗い。
もう夜のようだ。


『…一ノ瀬、捕まえてくれたかしら。』


あれからどのくらい経ったのか。
自身を刺したあの男は捕まったのか。

状況を知ろうにも、上手く身動きが取れない自分が歯がゆい。



『…っ…』


外した呼吸器の次は点滴だ。
右手に刺された針を抜こうと体勢を変え、再び腹部に走る痛み。

しばらく安静か、などと考えつつも、そんな場合ではないのだ。

痛みに耐え、
文字通り”勝手に”点滴を抜こうとした時、



ガラ…



控えめな音とともに、1人の人物が真っ暗な病室へと静かに入ってきた。


刑事としてとでも言うべきか。
反射的に警戒心全開で、
部屋に入ってきた随分と背の高いその人物を睨みつけたAだが、
うっすらと、廊下の明かりに照らされて見えたその髪色に、
その容姿に、すっと肩の力を抜いた。







「…目が覚めたのか」

『…』

「あまり、危ないことはするなと言っただろう」

『…”通り魔”を予知するスキルでも身につけろってこと?』

「…」


皮肉めいた口調で、病室へ現れた人物を見据えるA。

“あまり危ないことはするな”

確か2度。
告げられた言葉だ。

降谷から。
そして、安室から。


「…そういうことじゃない」


そして、目の前に現れた人物に、
ふと何かに気づいたような表情に変わるA。


『…そう言えば前に――』

「勝手に点滴外して、抜け出すなんてことをすれば、
謹慎かもしれませんよ?春宮刑事」


すっと目の前に現れた降谷は、
安室の口調でそう告げた。
明かりのない暗い病室。
それでも、目の前に立たれれば、Aがその表情を知ることは容易だった。


複雑そうな、苦しそうなその表情を。


『…』

「お大事に」


くるりと背を向け、病室を出ていく降谷。
Aは、険しい顔をして何かを考えるようにシーツの1点を見つめていた。

耳打ちされた指示_2→←黒に滴る赤_3



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設定タグ:名探偵コナン , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - いずみんさん» 嬉しいコメントありがとうございます!更新頻度はややマチマチですが、ご容赦ください。今後もお楽しみ頂けたら幸いです。 (2020年1月15日 19時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
いずみん(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください (2020年1月14日 21時) (レス) id: 37077eec40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2020年1月12日 18時

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