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桜_2 ページ7

そして、軽い昼食を終えると、
今度はデスクから色鉛筆とスケッチブックを取り出した。

『ちょうど、綺麗に咲いてる頃だもんね』

色々なモヤモヤを一掃するために、
リフレッシュするために、今日は休むと決めたA。

サブバックに道具を入れると、
身軽な格好で、部屋を出て行った。

3月も下旬となり、もうすっかり暖かくなった。
自宅周辺にもちらほら見える桜は、6部咲きといったところで、
ちょうど見頃だ。

駅の方向ではなく、
くるりと逆方向へと歩いて行ったAの行き先は、

米花公園。

ここは多くの桜が植えられていて、花見には最適な場所なのだ。
今日は土曜日ということもあり、公園内は多くの人で賑わっていた。

(…あの辺りが良いかしら)

Aは、花見客が比較的少ない公園の外れに腰を下ろすと、
周囲の桜をぐるりと見渡した。


そして、

サブバックから取り出したスケッチブックに、
色鉛筆を走らせ始めた。




――そうすること、20分。
無心で描き続けていたAは、
何かが肩に触る気配で、我に返ったように隣に視線を向けた。


「あ!」
「ダメですよ!歩美ちゃん!お姉さんの邪魔になっちゃいますよ!」


自身の顔の間近にあったのは、
見覚えのある女の子の顔だった。

そーっと覗き込むようにして、Aのスケッチブックに描かれた桜を見ていたのだ。

そして、その少し後ろで、
同じくAの手元を凝視していたのは、
前にも見た、光彦、という男の子だった。


『…えっと、歩美ちゃんと、光彦、くん?』

「え?歩美、お姉さんに名前教えたっけ?」
「僕も…。お姉さん、もしかして、エスパーですか?」

『フフッ』


大人びた口調の割に、
文字通り子どものようなセリフに、Aが小さな笑いを零した。


「え?本当にエスパーさんなの?お姉さん?」

『違うわよ。前に会った時、お互いにそう呼んでたでしょ?』

「「あ…、そっか」」

『名前を覚えるのは、これでも結構得意だから。』


名前を覚えるというスキルは営業では必須だ。
しかし、自嘲気味な笑みではなく、
ふわりと笑うA。
それは、
普段の表情からすると考えられないほど優しい笑顔だった。


「ねぇねぇ!お姉さんは何て言う名前なの?」

『月島 Aって言うの。よろしくね』


Aお姉さんかぁ…と、名前を教えてもらったことが嬉しそうに笑う子ども達に、
Aもまた、柔らかく微笑んだ。

桜_3→←桜



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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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