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鼓動_3 ページ43

「…なんか、嬉しそうだな」

『え?』

「…」

『嬉しい…っていうか、何だか意外だったから。』


そう言って、やんわりと口角を上げるAを、
萩原は口を閉ざしたまま、じっと見つめた。


『…えっと、あの店に、来た…のよね?
私、もう仕事終わったから帰るけど――』


なぜかジトリと見つめられて少し動揺を覚えるA。

今更ながら、いまいち萩原との距離を掴みかねているAは、
彼が、自分に会いに来たなどと考えることはなく、
彼の様子を伺うようにして言葉を零したのだが、
いつぞやのようにパシリと手首を掴まれ、反射的に口を閉ざした。


「…会いに来たんだけど」

『え…?』


ジロリとAを見つめ、そのまま足早に歩き出す萩原。
手首を掴まれたまま引っ張られるようにしてその後を追うAは、
彼の長い足の歩幅に付いていくのに精一杯で、
掴まれた手首を外そうとしたのだが、強く掴まれたそれを外すことは容易ではなく。


そして、すぐさますっと横の路地裏へ入り込んだ萩原に、
今度はぐいっと手首を引っ張られ、
気づけば目の前に迫る萩原の、整った顔。

路地の壁に、背を、手首を、押し付けられる形で迫られているのだ。


『ちょ、ちょっと….


――んっ…』


手首を押さえつけられたまま、当然のように重なる唇は、
噛みつくような、荒々しいもので。


『…っ…、ちょ…待っ…て』


目の前の男と何度かキスを交わしたとはいえ、
こんな乱暴な、焦ったような”それ”は初めてで、
戸惑いながら抵抗するA。


それでも、ちらりと見えた目の前の彼の瞳が、
少しだけ切なげに見えて、
そして、荒々しく重なった唇が、
少しずつ優しく、愛おしそうなものへと変わり、

少しずつ、深くなり、

Aは、だんだんと身体から力が抜けていくのを感じた。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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