Liar_6 ページ37
『こうやって送ってくれるのも、…下心かもしれない。って、分かってる。
でも、仕方ないんでしょ…?』
「え…?」
『…認めるしかないって、言ってたじゃない』
視線を戻し、自らを見つめてそう告げてくるAに、
萩原は口を閉ざし、戸惑った様子で心拍数を上げた。
『…度々こうして顔を合わせて、
何にも言わずに隣にいる貴方のことが、時々…頭から離れなくなるのよ。』
「…」
『貴方に、見透かされたようなこと、何度も言われたからかも…しれない。
でも、あの事件の時…、私が、襲われた時。
何でこんなに必死で、…泣きそうな顔してるんだろうって、
何だか、…そんな顔しないで欲しいって思ったの。』
「…」
『あの爆弾事件の時、…怪我したって聞いて。
いつの間にか、…貴方のマンションの前に行ってた。
…本当にあそこが、貴方の家かどうかなんて、分からないのに。』
少しだけ距離を空けてAの話を聞いていた萩原は、
愛おしそうな表情で、少しだけ、不覚にも泣きそうな表情で、
ほんの少し彼女に近づいた。
『…嘘つきだとか、
…傷つけたくないとか…、私が好きだとか…、
軽く口にできる貴方が…、苦手だったはずなのに。』
「…」
『でも、…本当は、認めたくなんてないけど、
傷ついたり、泣きそうな顔して欲しくないって…思ってしまってたのは、
多分、私も…、同じだった。』
「…」
『あのBarや、…公園で、”偶然”貴方に会えたら…、悔しいけど、安心するの。
やっぱり癪だけど…、貴方に見透かされて、
色々と決心することが出来たことに、感謝してるからだって、そう思うのに。
…それでもやっぱり時々、頭から離れなくなるのよ。
だから――』
そこから先の言葉は続かなかった。
強い力じゃない。
でも、目の前の身体に押し付けられるようにして感じる、わずかな圧迫感。
そして、ふわりと香るタバコの匂い。
「…俺のことが、好きって?」
『…え…』
「認めるしか、ないんだろ?」
見上げるようにして萩原の顔を見つめるA。
挑発的なセリフとは裏腹に、少し気恥ずかしそうに、
柔らかく口元を緩めている彼が、いた。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時