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Liar_4 ページ35

「サッカー、疲れただろ。
身体動かすと、酒、…呑みたくなるよな」

『…そう、ね』


この3週間。
萩原とはここで度々顔を合わせていた。
前にこの店で会ったのは、確か4日前だ。


連絡先は知らない。
待ち合わせをしている訳でも、当然無い。


ただ、こうして偶然顔を合わせるだけ。

ただ、偶然こうしてカウンターで隣り合ってグラスを傾けるだけだ。


萩原はいつもバーボンを頼み、
Aはいつも、エメラルド・ミストを口にする。

彼は特に何かを聞いてくることはなく、
ただ、適当な世間話のような会話をするだけ。

ただ、それだけだ。



そして、30分ほど経って、やはり一緒に店を出る2人。

駅の方向へ同じ速度で歩き出すのも、
Aの隣を歩く萩原が拒絶されないのも、
ここ3週間、変わらない光景だ。

危ないから、という理由で付いてくる萩原を、
Aが拒まない、というだけだ。



ただ1つ、違っているのは、
Aの表情。

4日前、同じようにこうして駅まで歩いていた時も、
僅かに困ったような動揺した様子を見せていたのだが、
今日は、それは少し分かりやすいほどで。



「…何かあったのか?」

『え…』

「いや、何か、イライラしてるみてぇだから」

『…』


わずかに眉を寄せるAは、
ピタリと足を止めた。


萩原は、好きだと伝えた自分の言葉に、
拒絶の返答が返ってきたことを忘れた訳ではない。
他の女のように、軽々しく距離を縮めることも出来ない。
これ以上迫るつもりもない。

吹っ切れたような気持ちもあった。
それでも、未だ気になる存在であることも事実で、
拒絶されない以上、こうして側にいるような真似をしてしまっている訳なのだが、
明らかに困った顔で小さく視線を彷徨わせているAに、
気まずそうに口を開いた。


「…あ、こうやって付いて来られて迷惑ってこと、か?」

『そう…、じゃ…ないわよ』

「…俺、何か、気ぃ悪くするようなこと言っちまったか?」


“傷つけたくない”と言った、あの日の萩原の言葉が、
Aの脳裏に反芻された。

気を悪くするようなこと言ってしまったか、などと、
まるで、女を口説こうとしているナンパな男のセリフのようだが、
萩原の目は真剣だった。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時

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