認めるしかないだろ。_8 ページ21
『…え…』
視線を合わせ、
真剣な表情で言葉を告げてきた萩原に、
Aはその意味が良く分からず、
開いた唇をわずかに震わせていた。
「…」
『…さっき、ただの下心だったって…』
「だから、…最初はそういう気持ちもあったって、認めただけだろ」
『強がってばかりじゃ拗れるとか…、
嘘つきだとか…、
散々失礼なこと言ってきたくせに…何なの…』
「それも、嘘じゃねぇよ。
月島に言ったことは、本心…だ。
でも、仕方ねぇだろ。」
『…え』
「気付いちまったの、
多分…さっきなんだから」
『は…?』
「こういうこと言うの、慣れてねぇんだよ…。
ちょっと話しかければ、女は大抵向こうから言い寄ってくるもんだろ。
だから――」
真剣に、自分の気持ちを口にするなんて、
慣れていないのだと。
真剣な自分の気持ちに、気付くということもそうだ。
それを伝えたかった萩原だが、
口にしたことは事実とはいえ、
つい零れてしまった言葉にハッと口を閉ざした。
目の前には、
複雑そうな表情で、自身を見上げてくるAの顔。
『…悪いけど、
私、軽い男の人、苦手なの』
掴まれた手首を離し、足早に歩いていくAを、萩原はもう引き留めることは出来なかった。
そしてしばし、力が抜けたようにぼんやりしていたが、ふっと切なそうに自嘲気味な笑みを浮かべた。
「あー…、やっぱり、こういうの、慣れてねぇわ。」
空を仰ぐようにして、
シャツのポケットからタバコの箱を取り出すと、その1本をくわえ、大きな紫煙を吐き出す萩原。
「…松田に知られねぇようにしねぇとな。
アイツ…絶対笑い飛ばしてくるだろうからな」
自虐的にもう一度小さく笑ったものの、
その目はやはり切なそうで。
そして、親友の松田を思い浮かべたのか、
その瞳に少しだけ優しい色が浮かべると、ため息のような吐息を零し、
Aとは逆方向へと去って行った。
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white12(プロフ) - なーこさん» またまた嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。どうにも回りくどく書いてしまう癖があるのですが、そう言って頂けて本当に嬉しいです。由紀さんの登場はRain執筆中からの計画でした (笑) 次回作は未定ですが、今後もご愛読頂けましたら幸いです。 (2019年12月20日 16時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*会社の為、隠忍自重する夢主が時折見せる弱さや脆さに萩原さんの言葉が染みて溢れ出すのを繊細に描いていたのが読んでいてじわっときました...。そして由紀ちゃんの登場は嬉しすぎるサプライズです!(笑)また次の作品も楽しみにしてます*。 (2019年12月20日 0時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月12日 17時