色鉛筆のお姉さん ページ8
「あー!色鉛筆のおねぇさんだぁ!」
「え…?あ!本当ですね!あの時の!」
米花デパートの専門店との打ち合わせ後、
駅に向かう道を歩いていたAは、
何やらこちらに近づいてくる可愛らしい声にくるりと振り向いた。
そして、目の前に誰もいないことを確認し、
ふと足元に視線を落とすと――
そこには、3ヶ月ほど前に米花公園で見かけた子どもたちの姿があった。
“歩美ちゃん”と呼ばれていた女の子と、
何やら大人びた口調の男の子だ。
萩原の子どもだろうか、と感じた、あのメガネの男の子はいないようだ。
『…前に米花公園であった子…かな』
「うん!そうだよ!」
「はい!あの時はサッカーボール取ってくれてありがとうございました!」
女の子は、見た目通りの可愛らしい口調だが、
子どもにしてはやはり大人びた、
わざわざ3ヶ月前のお礼を口にする男の子にAは苦笑いだ。
「ねぇねぇ!今日も絵、描いてるの?」
「あのときの絵、すっごく上手でしたもんね!もしかして、絵描きさんなんですか?」
『え…、あ…、ありがとう。
でも、絵描きじゃないの。今、お仕事中で――』
「えー!そうなの?
てっきり歩美も、絵描きさんかと思ってたぁ」
(…どうしても、絵描きであって欲しかったのかしら)
絵描きではないというAの言葉に、
あからさまにしょんぼりする2人に、Aは何だかおかしさがこみ上げてきた。
「あ、歩美ちゃん!もうすぐ約束の時間ですよ!」
「あ!ホントだ!博士の新しいゲーム…!
早く行こ、光彦くん!またね!おねぇさん!」
「あ、それじゃ、お姉さん、失礼します!」
そして、何やら約束があるようでパタパタとかけていく2人。
“失礼します”などと、
サラリーマンのような言葉を零す”光彦”と呼ばれていた男の子も、やっぱり子どもの姿で。
もう16時を過ぎている。
放課後に遊ぶ約束でもしているのだろうか。
(…今時の子どもは、腕時計はめてるのね)
大人びた口調もそうだが、
約束の時間だと口にしたあの”光彦”という男の子が視線を落としていた腕時計。
最近の子どもは凄いなぁと、
またも苦笑いを浮かべるA。
そして、自身もまた腕時計に視線を落とすと、
足早に駅へと向かったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時