バレンタイン_4 ページ7
「…アイツ。
口数少ないからさ、分かりにくいかもしれないけど。
…何かあったら相談してね?」
『フフッ。ありがとうございます。
…って、松田さんから聞いてるんですか…?』
「ん?何のこと?」
『あ…何でもないです…
ごゆっくりどうぞ』
度々訪れるこの店で、
いつものように入口側のテーブル席に座った萩原は、
恥ずかしそうにふわりと笑いカウンターへ戻っていく 菜々に笑みを向け、
こっそりため息を零した。
(…ホント、分かりやすいなぁ)
1ヶ月ほど前、どこか寂しそうな笑顔を浮かべていたAとは別人のようで。
心底嬉しそうな笑みを浮かべる彼女に、萩原は安堵していた。
5日前。
杯戸町で起きた暴行・傷害事件。
被害者は20代の女性で、
犯人の男は、彼女に付きまとっていた男だと耳にした。
そして、現場がこのCafé Rainと近かったこともあり、気になった萩原。
そのことを知ったのは、事件のあった翌日で。
その日は非番だった萩原は、
松田にメールをするも、やはり返事はなく。
それ以前から、メールや電話には応答のない親友の顔を思い浮かべて、ため息をついていた。
2日前に一課まで足を運びようやく話を聞くことが出来たのだが、
Aが襲われたにも関わらず、
松田の様子は苛立ちの中に、どこか安堵したような恥ずかしそうな様子で。
自身からの連絡を無視し続けていたことを責めるように問いかけると、
“悪ぃ”、とポツリと謝罪の言葉が返ってきたのだ。
菜々とキスしていたなどという誤解が無事解けたのだということ、
そして、それはおそらく 菜々と接することで解決したのだろうということは明白だった。
そして、おそらく――。
勘の良い萩原は、おおよそのことを理解すると、
“良かったな”、と松田の肩に腕を回したのだった。
―――
(付き合うことになったんだろ?って聞いても、
アイツ、否定はしてなかったしな。
…良かったな。 菜々ちゃん。)
わざわざそういうことを報告してくるマメな親友ではない。
聞いたところで、
そういう話になれば、普段から少ない口数が一層少なくなる訳で。
特に追求することはしなかったが、
菜々の様子を見れば明らかだった。
笑みを携えてコーヒーカップに口をつける萩原は、
カウンターの隅にAがいることには、気づいていなかった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時