無機質な報道_3 ページ45
Aの脳裏に浮かんだのは、
デパートの外でちらりと見えた、一人の隊員の顔。
萩原に似ていた、気がした。
『…萩原なんて、そんなに珍しい苗字、じゃないし…』
刑事じゃ無いことしか知らない。
研二という名前かどうかなんて、もちろん知らない。
知る訳がない。
友人という訳じゃないのだから。
先日、松田に言ったように、知り合いとも言えないような人物だ。
TVに映し出されるのは文字だけで、
写真が示されている訳でもなく、
本人かどうかなど判断する術(すべ)はない。
そう考えるも、
萩原に似ていた、気がした機動隊員の姿を思い出し、
思考はどんどん嫌な方向へと進んでいく。
『爆発により負傷…って…』
爆弾だ。
大規模な爆発じゃなかったと報じられていたが、
――爆弾なのだ。
それに、
『…解体中に爆発が起きた、って…言って…た…』
アナウンサーの言葉を復唱するように、
ポツリと言葉を零すA。
機動隊が何をするのかなんて、良く知らない。
でも、TVか何かで、爆弾を解体する姿を見たことがある気がした。
目の前で、爆弾を解体していて、
爆発した――、のだとしたら。
『…』
呼吸が浅くなるのを感じ、
Aは少し思案するようにしばらく床を見つめた後、
クローゼットを開け、部屋着から簡単に着替えると、
不安そうな顔でそのまま部屋を出て行った。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時