Liar (2)【名探偵コナン】 (ページ37)

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重い瞼_2 ページ37

「…あ、いらっしゃいませ」

出迎えてくれたのは、ここのマスターの菜々だ。
由紀さん、というもう一人の店員さんは見当たらない。
由紀は15時までの勤務などとは知らないAは、
今日はお休みだろうか、などと考えていた。

“お好きな席へどうぞ”と、いつものセリフとともに柔らかく微笑まれ、
Aが腰を下ろしたのは入口側のテーブル席。

「ご注文はお決まりですか？」

「ブレンドコーヒーを頂けますか？」

「かしこまりました。少々お待ちくださいね」

(…良かった。
遅めの時間だし、人少ないかなと思ってたけどあたりだったみたいね。)

店内には中年の男性がカウンターに座っているだけで、
少しガランとしている。

もう、17時20分を回っている。
ここでは、お昼時に萩原と2度も顔を合わせているため、
足を運ぶのが躊躇われたのだが、こんな時間なら大丈夫かと考えたのだ。

そして、重い瞼をこじ開けるようにぎゅっと強く瞬きをすると、
カバンからノートPCを取り出し、何やらカタカタと仕事を始めるA。

(…はぁ…なんか…本当に眠い…)

それもそのはずなのだ。
襲われてから数日、よく眠れていなかったのだが、
日が経つにつれ、少しずつ熟睡できるようになってきたと思っていた。
しかし、
2日前に事件が起こりまたもベッドで眠りにつく際に襲ってくる恐怖。
仕事の忙しさに加え、そのせいで、ほとんど良く眠れていない訳で。

慰謝料を――、などという考えももはや浮かぶことはなく、
モヤモヤとした不安と恐怖をかき消すように、
Aはディスプレイ上の仕事に集中した。