再び ページ35
10日後。
出勤前のAは、不安そうにTVのニュースを見つめていた。
“杯戸ショッピングモールの駐車場で不審物”
精巧に作られた小型爆弾か”
そのテロップに、ゾワッと悪寒を覚え眉をひそめるA。
あの夜の、
2週間前の、襲われた夜のことが思い出されたからだ。
(…また、爆弾…。
レプリカって書かれてないけど…本物だったら…)
恐怖を煽るような想像をしてしまい、
ふっと時計をみるともう出勤しなければならない時刻。
ジャケットを羽織ると、
Aは慌てた様子で部屋を出て行った。
一方、2時間後の警視庁。
鑑識課では、萩原と松田が顔をしかめていた。
その後ろには、女性刑事の姿。
1ヶ月ほど前と同じような光景だ。
「…チッ…かなり精巧に出来てんな。」
「あぁ。複雑なレプリカって可能性も考えてはいたんだけどな。
時限式の本物だ。スイッチは入ってなかったけどな」
「…あの男が最後に緑台に置いてた爆弾もそうだったな。
でも、前のやつとは構造がかなり違う。
共犯って訳じゃねぇってことか…あるいは――」
「共犯者の技術が上がって、犯行がエスカレートしてるってこと？」
萩原と松田がブツブツ言葉を交わす間に割って入るように、
佐藤が口を開いた。
「…さぁな。どっちにしても、とりあえずあの男から話聞かねぇとな」
まるで佐藤を威嚇するかのように、
ギロリと鋭い目を彼女に向ける松田。
佐藤もまた厳しい目つきで”そうね”と口を開いた。
「共犯だとしても、そうじゃねぇとしても、また連続的な犯行の可能性もある。
警戒態勢を強化する必要があるんじゃねぇか？
…これ、起爆スイッチが入ってたら、
――かなりの威力だぞ。」
「…チッ。言われなくても分かってる。」
眉を寄せた萩原の助言に、舌打ちで答える松田。
それをたしなめるように、
「萩原さん、ありがとうございました。
また、ご協力頂くと思いますけど、よろしくお願いします。」
と、佐藤は松田とともに小走りに鑑識を出て行った。
フードの男が逮捕されて2週間。
再び起こった、類似した不審物事件に、
――いや、爆弾事件に、萩原は苦々しく小さな舌打ちを零した。
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作者名：white12
| 作成日時：2019年12月5日 19時
