歯切れの悪い訪問客_5 ページ27
「…ずいぶんハッキリ話すんだな」
『…だって、貴方、何だか気にしてるみたいだったし。
気のせいだったら、忘れてくれる?今言ったこと。』
「いや…そうじゃねぇけど。
“大丈夫”って、…追い返されるかと思ったから。」
『…』
確かにそうだ。
何で、正直にペラペラと話してしまったのだろう。
先ほどの北川の件も然り、
正直にあれこれと話してしまったことに、Aは瞬きを繰り返している。
大丈夫。
平気だから気にしないで。
そうやって強がってきたはずなのに。
あの夜も、この男に、
大丈夫だとそう言ったはずなのに。
「嘘つきだと思ってたけど、
…そうやって正直なところもあるんだな」
『…は?』
「月島 A、さん。」
さらりと笑みを浮かべた萩原だが、
その笑みはこれまでAが目にした軽そうな、色男のような笑みではなく、
優しそうな、ふわりと柔らかいもので。
不覚にも、わずかに動揺してしまったAは、
“そうやってくだらないこと言いにきただけならもう帰って”、と、
追い返すように、萩原を玄関から押し出した。
左腕一本で押す程度の力だ。
萩原にとっては子どもが押しているようなものだったが、
素直に玄関から追い出された萩原は、
安堵したような、柔らかいため息を吐き出すと、
Aのマンションを去って行ったのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時