歯切れの悪い訪問客_3 ページ25
『…わざわざ謝りに来たってこと？』
「電車で帰れとか…、警戒を促すようなこと言っておいて、
途中まで送っていくようなことしておいて、
…何で最後まで送って行かなかったのかって…」
『...放っておいてって言ったはずだけど』
「…は？」
『勝手に歩いて帰ったのは私だし、
それに、帰る方向が一緒だっただけでしょ。貴方と。
送って行って貰った訳じゃないでしょ？』
申し訳なさそうに、謝罪の言葉と、
自身の行動を後悔しているような言葉を漏らしていた萩原は、
Aの言葉に眉をひそめた。
『警察の人なんでしょ？
あなたも、松田さん…と同じ刑事さん？』
「あ…いや、刑事じゃねぇけど」
『ふぅん。まぁ、どっちでも良いけど、
警察官として責任感じてくれてるのかもしれないけど…、
そんなに気にしなくても、…良いから。』
「いや、そうじゃなくて――」
『それに、あの男を見かけたのは、
コンビニに立ち寄った帰りなの。
真っ直ぐ帰ってれば、あんなことにはならなかったかもしれない。
…男を見つけてすぐに通報していれば、
すぐに大通りに逃げていれば、あんな風に追いかけられることはなかったかもしれない。』
「…それは…」
『…色々言い始めたらキリがないわよ。
私に警戒心が無かったのも事実だと思うし。
…事故、みたいなものでしょ。』
「…月島」
別に貴方のせいじゃない。というように、
言葉を続けるAに、
萩原は小さく声を漏らした。
『…そう言えば、あの時、そう呼ばれた気がしたんだけど。
私、萩原さんに名乗ったことは無かったわよね？』
「あ…。前に、ちらっと聞こえてきて」
『もしかして、北川さんと話してたとき？…あのBarで』
自嘲気味に笑うAに、
萩原は困ったように小さく口角を上げた。YESを意味するように。
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作者名：white12
| 作成日時：2019年12月5日 19時
