Liar (2)【名探偵コナン】 (ページ16)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:74,935 hit

止血_4 ページ16

自身が殺されようとしている場面。
何故か客観的に、
それを周囲から見ているような、冷静な感覚に陥ると、
我に返ったように、Aは思い切り、目の前の男めがけて膝蹴りを食らわせた。

「…っ…」

一瞬ひるんだ隙に、
押さえつけられた腕から逃れ、全力で走り出したA。

しかし、逃げること10秒足らずですぐに後ろから腕を掴まれてしまい、
叫ぼうとするも、もはや声を発することが出来ない。

先ほどまで一瞬冷静になっていた思考は、
恐怖で埋め尽くされていた。

自身に向けて、
ナイフが振り落とされようとしていたのだから。

『…や…っ…！』

震える足で蹴り飛ばそうとするも、
とっさに庇うように顔の前にかざした腕に感じた鈍い痛みで、
その足は固まった。

『…っ…』

そして、もう一度、男がナイフを振りかざそうとした時――

「――やめろ！警察だ！」

「…！」

どこからか聞こえた、
叫ぶような男の声に、とっさにその場から逃げようとするフードの男。

その聞いたことのあるような声に、Aが周囲に視線を向けると、
息を切らして路地から現れた、

――萩原の姿があった。

(…そっか…ここ…、萩原さんのマンション…の、近く…)

先ほどまで、歩いていた道だ。
あの男と、一緒に。

こちらに心配そうに視線を向けつつも、
男を追うように走っていく萩原。

そしてAは、
彼に向けていた視線を、恐る恐る痛む自身の腕に向けた。