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困ります。_4 ページ31

「ごめんね?俺が誘ったようなものなのに」

『いえ、とんでもないです。』

「じゃあ、どうする?…1杯くらい大丈夫だよね?」


どうする?とはどういうことだ。
当然のように肩に手を置こうとしてきた北川に、
Aは、両手で無理やり距離を置くような格好をした。


『いえ、すみません。』

「…あれ、今日も社に戻る?
じゃあ、駅まで送って――」

懲りないのか。
触れられることを拒絶されていることに気づこうとしないのか。

さらっと、今度は腰に回されそうになった北川の手を、
Aは、パシリ、と軽く払った。


『…こういうのは困ります。』

「え?」

『弊社とお取り引き頂いているのは有難いと思っています。
でも、申し訳ありませんが、個人的なお誘いや、
…こんな風に身体に触れてくるのは、止めていただけませんか』

「…は?」


いつもの笑みを消し、
眉を寄せ、口をきゅっと結んで抗議するAに、
北川は怪訝な顔を向けた。


『申し訳ありません。』

「…」


丁寧に頭を下げるAに、
北川は苛立ったようなため息を吐いた。


「…何か勘違いしているみたいだけど、
そんなことした覚えないし。
俺は今日、新しい案件の話をしにきただけだけど」

『…』


分かりやすい逃げの文句を残し、
去っていく北川の背中を、
Aは心底軽蔑するように見つめた。

セクハラだと訴えれば、きっとすぐに問題になる時代。
ハラスメントは、被害者側の、
訴えた側の、捉え方の問題だ。



それを利用するつもりなど更々ないが、
泣き寝入りするつもりも、ない。

ただ、訴えればそれで終わる話ではないと、
Aは分かっている。

証拠もない。
問題になれば、それなりに調べて貰えるかもしれない。

でも、それに伴う損害は?
もし大きな損害を被ったとして、
得られるものは?




先ほど、
Aが口にした言葉で、
何かが変わるだろうか。
Aにとって良い方向に。

あるいは、悪い方向に。

それでも、悪いことをしたとは思えない。
ただ、嫌だと思うことを、
仕事とは関係ないところで関わることを、
はっきりNoと述べただけだ。


(そういえば、湯川に相談されてた件、
まだ返信してなかったわね…)


ふと、部下の湯川に相談を受けていた仕事の案件を思い出すA。
モヤモヤを吐き出すように、大きく息を吐くと、
北川が去っていった道とは反対方向へ、
回り道をするようにして、駅へと向かったのだった。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時

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