アイスティー ページ17
それから3週間が経った。
「あ、月島さん。昨日ご相談した案件ですが、これがリサーチした内容で――」
「あのデザインですけど、前に月島さんが作ったファイルで――」
「この前話した件だが、担当は――」
湯川を始め、あれこれと部下や部長の対応をこなしながら、
仕事を進めるAは、時折、貼り付けた笑顔が崩れそうになるのを、必死で抑えていた。
直接の打ち合わせの予定はまだ立っておらず、
顔を合わせることはないのだが、
北川からのメールは、
毎日、その頻度は増しているような気がしていた。
余計なことに神経を使いたくないAは、
通知をOFFにし、気づかないフリをしていた。
――――――
『はぁ…』
本日何度目かのため息を漏らすAは、
最寄駅の緑台の1つ手前、米花駅で降りると、
Bar Curiousを目指して歩いていた。
今更ながら、
また、北川に会うのでは無いかと、もう店に行くのは止めようかとしばらく足を運んでいなかったのだが、
Aにとっては結構気に入っている店なのだ。
あの男のために足を運べなくなるなんて、と腹立たしい気持ちで、
何やら吹っ切れたように、こうして足を運んでいるのだ。
『エメラルド・ミスト、頂けますか?』
カウンターに座り注文するAは、
念の為、というように、店内をさりげなく見回した。
2週間後にクリスマスを控えたこの時期に合わせて、
店内はキラキラと、装飾で彩られている。
(…良かった。いないみたい。)
そこには、北川の姿はない。
そして、あの、萩原という男の姿も。
見られていたかは分からない。
そもそも覚えているかも分からない。
しかし、不本意ながらも、体を触られていたところに現れたあの男とも、
やはり顔を合わせたくはなかった訳で。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時