Bar Curious ページ2
カラン…
米花町の外れにあるBar Curiousのカウンター席。
溶けて音を発する氷を前に、
Aはあからさまに不機嫌そうだ。
口元に親指と人差し指を当て、睨みつけるように眺めていたグラスを少し乱暴に掴むと、
それをグイッと飲み干した。
『…同じもの、貰えますか?』
宙を仰ぐように、
不機嫌そうな口から吐息を吐き出し、
しばらくして再びカウンターに差し出されたカクテルに口をつけるA。
透き通る青が綺麗だと、気に入ったカクテル。
その甘さからついつい飲み過ぎてしまいそうな、ブルーキュラソーをベースにした味も好きだった。
だが、いまいち美味しいと思えなくなったのはいつからか。
「あれ、月島さんじゃない?」
『…え…』
横から声をかけられ、振り向いたAは一瞬固まった。
が、すぐさま柔らかい笑みを浮かべるのは、
もう染み付いて取れない癖になってしまったのかもしれない。
『…こんばんは。北川さん』
「1人でこんな場所に来るんだね。それ、エメラルド・ミスト?
あんまりお酒強く無いっていつも言ってるのに、…大丈夫?」
『あ、いえ…』
目の前の中年の男、北川は、どうやら酔っているようで。
暗い店内では分からないが、顔を赤くしているんだろうなとAは思った。
1週間ほど前にも目にした、赤い彼の顔を思い出して。
「んー?何か嫌なことでもあった?」
『いえ…そんなことは』
「俺が話聞いてあげようか?」
Aの肩に手を置き、
隣の席に当然のように腰を降ろす北川。
『いえ…、本当にそういうことではありませんので』
「とか言って、無理してるんじゃないの?いつも頑張ってるから」
北川は、思いやりのある良い男でも演じているつもりなのか。
薄っぺらい言葉を口にしながら、
カウンター下のAの足元に手を伸ばした。
スカートから覗く、その太ももに。
『あの、私はもう――』
「悪い。待った?」
“帰りますので”
そう言って、グラスを残したままやんわりと席を立とうとしたのだが、
今度は後ろから声をかけられ、
そして、北川とは反対側から自身の顔を覗き込むようにして現れた男に、
Aはまたも一瞬固まった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時