Rain (3)【名探偵コナン】

現行犯_2 ページ31

「…葉山侑斗。
香坂 Aヘの付きまとい行為と、暴行...傷害罪の現行犯だ。」


現れた男に捻りあげるように両腕を後ろ手に掴まれた侑斗は、
ジタバタと抵抗する様子を見せた。

「やめとけ。公務執行妨害の罪も重ねる気かよ」

「…っ…」

その言葉で抵抗をやめた侑斗は、
男の手から手錠をはめられ、悲しそうな悔しそうな顔を見せた。

そして、自身の首から侑斗の手が離れ、
解放された Aは、
大きく息を乱し、壁を背にして崩れ落ちるように座り込んだ。


「…大丈夫か」

『…はぁ……はぁ…、は…い…』


酸素が足りず、
いや、突如起こったことに思考が追いつかないためか、
それ以上の恐怖のためか、
Aは、YESと返事をするだけで精一杯だった。


そして、安堵から、
また、目の前に現れた人物を目にしたことで、
じわりと涙腺が緩んだ。

心配そうにAと見つめる男は、
逃げんじゃねぇぞ、というように、
今度は侑斗を睨みつけるように威嚇すると、
さっとコートを脱ぎ、それを座り込むAにバサリとかけた。


そして、何かに気づいたように、
Aにかけたコートのポケットを探り始める男。


その至近距離に体温が上昇しそうな状況だが、
今のAは、息を整えるのに精一杯だ。
ポケットから取り出した携帯でどこかに電話をかけ始める男を、
ただ、ぼんやりと見つめた。


今どき珍しい、2つ折りの携帯だ。
度々店で見たことがある携帯。
閉店後のカウンターで彼が何やら操作をしていた、携帯。


(…松田、さん。)


駆けつけてくれたのは偶然か。
先ほど浮かんだ自意識過剰な考えは、
当たっていた…のだろうか。




ハラリ


かけられた彼の黒いコートに落ちる白。


どうやら予報は当たったようで。
やけに冷えると思ったら、雪が降り出したようだ。


コートを手に、松田に返そうとするAだが、
震える足を動かすことは、難しく。
心配そうに見つめる先の松田は、
気力を無くしたのか、
Aのように座り込んだ侑斗の腕を掴み、睨みつけている。


息を整え、
なんでこんなことになったのだろう、と、
以前も思い浮かべたセリフを心の中で吐き出すAは、
一層緩みかける涙腺を抑えるように、強く瞬きをした。

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