Rain (3)【名探偵コナン】

指輪_4 ページ29

彼と向かい合うAは息を乱し、
その左手を構えるようにして胸の前に持ち上げている。


右手首は押さえつけられたままだったものの、
指輪の有無を確認するように握った程度の侑斗から、
左手をパシリと離すと、
そのまま、思い切り彼の頬を叩いたのだ。

Aの左手で叩かれた程度では、
大した痛みはなかったが、
侑斗は驚いたように見開いていた目を細めると、
くしゃりと顔を歪めた。


「…A、なんで拒絶すんだよ…」

『…』

その顔は、何やら勘違いをした自信に満ちたものではなく、
悲しげに、見えた。

「…Aも…かよ。なんで…」

『…侑斗…』


二度と会いたくなかったのは本心。
でも、勝手に店に入ってきて、
自信があるように迫ってきたときとは違い、
急にこんな顔をされて、やはりどこか心配してしまうのは、
3年付き合った”情”があるからか。


「店に会いに来るくらい…、良いだろ…」


『…勝手なこと、言わないでよ。
無理やりあんなこと…、良い訳ないでしょ。
私のお店なの。大事な店なの。』

「…それであの男、
あの、刑事の男に俺が来ないように頼んでたってことか…。
そこまでして――」

『え…何の、話』

「…とぼけんなよ。
営業時間だと…、 まぁ色々面倒かと思ったからな…。
前みてぇに店が閉まった後に入ろうとしたら、何度かあの男に邪魔されたんだよ」

『え…』




何の話だ。
邪魔をされた？

この間、
高木と伊達、という捜査一課の刑事が店に来た時、
捜査の後に、必ずどこかに立ち寄っているようだと聞いた。
それが、いつも決まってCafé Rainの方向だとも。


(…まさか、店には来ないで、
外で警戒してくれてたって…こと…？)


まさか。
警察に言った方が良い、と助言を受けたものの、
未だ、被害届は出していない。
被害、といっても、どう訴えるべきか分からない状況だった。


単なる偶然かもしれないし…、と、
自意識過剰な考えに陥りそうになる思考をSTOPさせるA。


今、目の前には侑斗がいる状況で。
緊迫した状況、とも言える訳で。

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