Rain (3)【名探偵コナン】

知っています。_7 ページ18

しばらくして、
コーヒーを飲み終えた萩原は、
代金を支払うとともに、Aに自身の電話番号を書いた店のナプキン紙を渡すと、
“何かあったらいつでも相談にのるからね”と言って帰っていった。

相談にのるといった手前、
連絡先を渡してくれたのだろう。
それに、
以前聞いた松田との会話から、彼も警察官のはず。
あの男のことは松田から話を聞いているような口ぶりだった。


(心配してくれているんだろうな…。相談、か…)


といっても、何を相談するべきなのか。
松田にされたことを口にしようとは思わない。
酷いことを言われた訳でもない。

侑斗とのことも、何とかしなければいけないことは分かっていたが、
警察に相談するという考えは、まだ無かった。

Aにとっては、萩原は店に度々来てくれるお客で、
そして、警察の人。
松田と仲が良いと分かっても、やはり、“警察の人”であって、
“お客さん”であって、
それ以上でも以下でも、なかったのだ。



――――

(…わかりやすいなぁ…)

店を出た萩原は、コートの中から取り出したタバコの箱を手に、
可笑しそうに口元を緩めていた。

そして、ため息をついて思い浮かべるのは、
古くからの友人、
いや、親友である、態度の悪い男。
松田の姿。


Aに言った通り、警視庁内や捜査で顔を合わせることが多い訳ではない。
警視庁に入庁してから見つけた2人の行きつけの店に、
度々飲みに行っていたのだが、今年に入ってからは――。

萩原のメールに、返信がないのだ。
電話も然り、だ。

松田が勘違いをして萩原に悪態をついてきたあの日から。

念の為、何かあったのかと捜査一課近くに足を運んだことがあるが、
そこにはちゃんと松田の姿があった訳で。

そして、4日ほど前。
米花町から不審物の通報を受け、
爆弾の可能性もあるとのことで米花町に向かった際、
一課の刑事の松田と顔を合わせたのだが、捜査関連の話以外をすることは叶わなかった。


(まぁ、故意に避けられてるってことは分かるんだけどな…
どうしたもんか…)


自分が原因だろうことに自嘲気味にため息をつく萩原だったが、
分かりやすいAの表情を思い出して口角を上げると、
タバコを弄ぶようにしてくわえた。


(…あんまりモタモタしてっと、こじれるかもしれねぇぞ？陣平ちゃん)


もうすぐ2月というずいぶんと気温の低い日だ。
紫煙を吐き出す萩原は、
寒さに身を震わせるようにして、足早に路地へと向かったのだった。

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